秘伝・合気道 堀川幸道口述 鶴山晃瑞編 15
3合気とは何か?
合気術は気合術とはその本質も目的も全く異なるものですが、その相関関係は微妙であります。大東流合気柔術はこの合気と気合(柔術)が合一一体とならねばなりません。
私はこの本では合気とは何かということを出来るだけ理解できるよう説明する義務があると思っています。合気というものは形や言葉の表現力のみではなかなか理解することが困難なものであります。また、これを写真や図解で解説を試みてもその技法の一瞬の働きや動きを捕らえることもできません。例え、瞬間-瞬間の写真を分解し、またいくつかの解説パターンを組み立てても、合気を使った瞬間の精神的な働きや、更に相手の気合力に順応させた働き等の感応力はわからないものと思います。
合気の術は口伝伝承が建前となっており「体得せざれば理解せず」という昔からの言葉が残されております。
伝承系路や合気柔術の実体が秘伝化されたままでは、合気道の真実についてますます誤解を生む結果となることに思い至り、この資料の公開により幾分なりと、真の合気をご理解いただければ、と考えます。
伝統武芸とは自ら体得して初めてその真実の実像に触れることができるものでありますから、写真や文章で公表することは、専門古武術家の先生からは明らかに嘲笑されるであろうことは覚悟しております。
大東流以外の伝統武芸で用いられている共通用語に形がある武術を「有形の理」、形のない“気”の問題を「無形の理」といっております。
解説 1975(昭和48)年当時、合気の技を本格に紹介した、本や写真、まして動画などはありませんでした。一部書籍にある文字情報のみで、しかも「触れた途端に崩される」など一般の人にとっては信じがたい内容でしたから、この本により写真が公開されていたらかなり衝撃的だったと思います。
さて、合気技法も柔術テクニックと同様に身体操作法の一つですから、分析・説明・再現(相当の稽古が必要ですが・・・)可能なものです。諸先生の努力で、合気技法も知られるようになり、その分析・説明も多岐にわたり、初学者がアプローチする方法が増えたのは喜ばしいことです。