技の原理
武術の技は、何らかの力を相手に通すことで成立します。素肌を通じて、得物を通じてなど力を通す手段はいろいろあるにしても、です。
まず、攻撃があって、これを捌くという前提からすると、相手の仕掛け=意志と行動から発生する力を利用します。いわゆる借力(相手の力を利用する)です。
この借力系の技は自分の力をほとんど使わずに捌けますから、力がなくても一定程度こなせるのです。ただ、相手に応じて体捌や自在な変化が求められますから、この練習(習得)が難しいといえます。
一方、攻撃を避け(止め)た後に、我から通力する技法もあります。一般的にはこちらの方がイメージし易いでしょう。この通力は相手がすぐにわかるものと、体自体は反応しているのに意識の上では感知しにくいものがあります。「見える力」と「見えない力」と言い換えてもいいでしょう。
触れ合気系の技法はこの「見えない力」を駆使します。この「見えない力」はシンクロナイズドスイミングをイメージするとわかりやすいと思います。シンクロナイズドスイミングの水上部分は優雅で美しいですね、でも水中では必死に手など動かして浮力を作っています。すなわち、目に見える、力のこもった動きはないけれど、見えない部分の筋肉(腱や靭帯)で仕事をしているのです。
これらの技法に優劣はありませんが、「見えない力」を用いる方が習得が難しいことから、一般的には高級技法とされるようです。映像映えもいいですから。
さて、体そのものが武器のような体格の人なら、さほどの技術はいらないかも知れませんが、同じ体格の敵が現れたら困りますね。より体を大きく強くといっても、ヒトには生理的・物理的にも限界がありますからこの路線を突き進むには無理があります。したがって、そのような方でも通力の技法を学ぶ意義があるということです。