「体当たり」という技術
体当たりは接近戦において、原始的かつ有効な方法です。打突系の武術も基本、体当たりの技術といっても言い過ぎではないでしょう。体幹(肩)で当たるか、ひじか拳か等当てる部位は異なっても基本術理は共通しています。
この技法を確立し、勢法の中で正確に伝承しているのは、新陰流兵法です。一打三足という歩法のことですが、これは入門当初に習う勢法に出てくる最も基本的な捌きの一つです。なお、原理としては、ニュートンのゆりかご(カチカチ玉)と同じですが、人間は鉄球ではないので、体を鉄球のように使う技術が必要なため、難しいのです。大東流では、新陰流兵法を原形とする合気柔術(合気道)技法にも当然継承されていて、いつでも使えるよう稽古されているハズなのです。
さて、体当たりというと、相撲の立合がイメージしやすいでしょう。
元横綱稀勢の里がこの技術を使っていたことが、本人へのインタビューから分りました。稀勢の里はこのように語っています。
「立合は、1歩目の踏み込みを意識して(大きく踏み込み)、しっかり止まる。自分が止まって、相手とぶつかり相手が壊れていく。止まるときは、自分が岩になる、石になる、石になるにはしっかり構えて腰をしっかり入れて止まること。この構えは、手の位置、腰の位置が1㎜違っていてもきまらない、試行錯誤を繰返し、石になる瞬間を見いだした。」
なお、稀勢の里によると、相撲の立合は1歩目の踏み込みを小さくして、そのままぶつかっていく方法もある(こちらが一般的イメージに近い)が、自分は止まる技術を用いていた、そうです。
この稀勢の里の技法こそが「体当たり」という技術なのです。
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