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極意秘伝のはなし14
古流楊心神道流経絡之巻(中)
月影の殺は、肝に当てる事なり。肝の形は木の葉の始め、七葉あり。四葉は右に付いている陰の部なり。三葉は左に付いている陽の部なり。常必偶陽は寄、これによって知るべし。この殺は大事の当身なり。常に必ずなす事なり。肝胆の府は、すべて人間剛強いずるところなり。月影は期門(ツボ)の辺りに近し。最も稠(きびし)く経に当たる時は、力持つ事難し。ゆえに思いの外に吐息を出し、直ちに死に及ぶことあり。その時息絶えて表裏経絡補摩(さすっても)ということありとも、よく活生すること難し。口伝あり。
雁下(がんか=乳根にゅうこん(ツボ))は、両乳の辺りをさして当てるなり。この経はすなわち心肺二臓に徹するところなり。心肺二つは上に位して下1寸にあり。これ第一焦(上焦)の穢濁(わいだく=けがれること)の気を受けず、当たるところの経は両方各1寸にあり。これら一の心臓に当たると知るべし。心の臓は肺中に孕(はら)みて上位すなり。これよって膈膜というもの覆(おお)ってある(心包)ゆえに、心肺の二つは下焦水穀の穢気(わいき)を受けざるなり。五臓の内において、心の臓は至誠君主の位なり。神明の寓するところ、一体の神霊なり。外の臓腑は心の臓より達するものなり。この地少し当たりても甚(はなは)だこたえるところなり。これすなわち、天真の気至るところなり。最も大事の殺なり。口伝あるなり。