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「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」23

西江水 映す位の 心持ち 兆(きざ)すところぞ 真実の勝ち
西江水 保ち保ちて 十間の 先の敵おば 見つめして勝つ
西江の 兵法人に 向かいては 一人狂いに なれるものかな
善々の なしてなさざる 習いこそ 西江水の まなこなりけり
補足説明:西江水とは新陰流兵法の秘伝口訣です。尾張柳生家の伝書には、筆者が知り限り、これを秘すためか、ほとんど説明がありません。『始終不捨書』に「心之持所 三関 ハ セ セ」とありここに西江水が登場します。ハ・セ・セとは、腹・背中の帯を締める位置・西江水のことです。
一方、江戸柳生系の伝書には、講義の必要から研究整理され、詳しく説明があります。
西江水とは、心法と刀法(体の整え方)の口伝です。
『月之抄』には、石舟斎の書伝及び宗矩の口伝として、西江水とは心の置き所・心を納める所、腰より下に心得よ、とあります。一所に心を留めない、常に転じて跡を残さないこと、そのためには心の置き所を定め、そこから自在に転じていくべきであると、神妙剣の心法につながるものです。

『柳生宗矩兵法問答集』には、
西江水之事 下へ詰むる悪し・上へ詰むる悪し・中へ詰めたる良し
捧心之事 目にて見る悪し・観にて見る良し・西江水にて見る良し
立合西江水を立て候事 懸かる時、西江水を道々持って行くこと悪し、立合
           たる所にて西江水を立てたる所専らなり、懸かる時
           は西江水を捨て、捧心一つに懸かる良し
西江水を捨て、捧心一つに思えば一拍子になり、外さるる心あり、この心得が肝要
西江水を捨てずに懸かる時は、垂(しだる)く成り
…など詳解しています。そして、油断なく心の下作りをすることである、と教えています。

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