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短刀取と懐剣術(中)

相手との間合からみると、刃の長さは、短刀の持ち方(刃が前向き)に比べ懐剣の持ち方(刃が後向き)では、もっと短い(ほとんど素手)。懐剣は武家の娘の護身用であるが、御殿女中の携行品でもあった。御殿女中というのは、江戸時代、将軍家、大名家の江戸屋敷などの奥向きに仕えた女中で、行儀見習いのために出仕する者も多かったのである。江戸城内では、男子禁制の場所で奥女中(御殿女中)として一生過ごす人も幾多いた。そこで、お家騒動などいろいろことがあることから様々な推測や憶測がうまれ、これが歌舞伎や人情本に面白おかしく使われたことから、御殿女中は険悪な策謀をめぐらして人を陥れようとする女、底意地の悪い女に例えられることもある。
さて、江戸柳生系合気柔術の第1~5か条は、皆伝の口伝によれば手数が段階的に増える連続した技法群なのである。これを植芝合気道では、第1~4か条までをとり出し、しかも別々の技として扱っている。そして唐突に単刀取を付加して5か条という体裁だけを整えたのである。

堀川幸道門下の岡本正剛も『大東流合気柔術』の中で短刀技として短刀取を2本公開しているが、柔術の応用技である。本来は十手捕(柔術5か条)の技法としたかったのであろうが、設定が違っている。時宗系の合気武道でも単刀取があるが、攻撃が順手か逆手かに関わらず。仕手の捌きが柔術の応用技であって、懐剣術とは全く異なる技法であることがわかる。

江戸柳生系合気柔術では、十字受けを原則としている。しかも、基本は後捕なのである、左手で後えりを掴み右手(懐剣)で刺す攻撃、これを十字受けするところから始まる、十字受けからはあらゆる技に入れる、しかも十字受け自体が秘伝口訣なのである。

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