「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」3
目付には 二星嶺谷 遠山を 見観として(よくよく見分け) 使え兵法
打つ太刀も 飛ばする剣も 二星より 出ると知れば 迷わざりけり
兵法は 二つの星と つかえたり 恐ろしからぬ 太刀の面影
補足説明:目の付け方・使い方は相手の動きを知る上で最も重要なことです。
敵の両拳(二星:にせい)の動きを見て勝つことを二星の目付、両拳の動きの源である両ひじへの目付を嶺谷(伸びたひじが嶺、屈んだひじが谷)、
二星・嶺谷の動きの源である両肩への目付を遠山(えんざん)といいます。そして、これらを三見と呼びます。例えば、敵が袈裟に打ちかかってくるとき、剣先は早くて見えませんが両拳は見えます、そして、その気配は両ひじ・両肩に現われるということです。実戦的な心得としては、鎌ではないので拳の動きより先に剣が我に届くことはありません、そこで両拳の動きをよく見てこれ(柄中)を捉えればよいのです。この時の太刀の使い方を転打(まろばしうち)といい、十文字勝とう極意なのです。
なお、二星には三見のさらに根源を指す目付の意味もあります。向上の目付として両眼(二星)を見るということです。見(肉体)観(心)の目付です。江戸柳生系合気柔術では、観の目付を称して心で応じるといいます。