大東流合気柔術の原典
孫子の兵法が大東流の基本理念とされています。鶴山先生のメモにも孫子の兵法の引用解説がたくさんあります。今回はその中から。
孫子計篇に「兵は詭道(きどう)なり」とある。
「詭」とは、いつわる、あざむく、たぶらかす、の意で「正」に対するとともに「奇」に通ずる。「正道」が定石的なやり方、ありきたりのやり方、相手の思うつぼのやり方、を意味すれば、「詭道」とは、定石にないやり方、相手の意表を突くやり方、相手を混乱させるやり方、ということになる。これは新陰流兵法の刀法の理と同じである。すなわち、「兵は詭道なり」の文意は「戦闘の展開には定石というものがない」ということである。これをもって、新陰流兵法では型とは言わず勢法といい、江戸柳生系合気柔術も変幻自在の変化と無構えを教えている。ここに大東流合気柔術の原典となる考え方がある。
戦略を計画とするなら、戦術はその計画を実行するための仕掛けである。戦術は相手やその場の状況に応じて変化するもので、一定不変の形などはないのである。大東流合気柔術はあらゆる攻撃の想定に対し、基本体捌とそれに付随する無数の変化、基本技とそれに付随する無数の変化、更に、返技とその応用展開を学ばせ、戦術の具体例を教えているのである。