沢庵和尚22
沢庵の教えに関して、思い出すことがある。田中清玄(きよはる)のことである。かつて共産党のリーダーであった田中は獄中転向して、師事したのが三島の禅師であり、そこで「表面に出ず、黒子に徹すれば君の将来がある。」と言われたそうだ(本人から直接聞いた。)。石油ショック以来、新聞など表に出るようになって、上手くいかなくなったが・・・、宗矩も同じようにやっている。
宗矩は自分の子どもの処遇や、自身が死んだら禄を返上するということをやっている。宗教心、禅の心が引き起こした考え方であると思う。武の道で生きていくためには、常にこのできうる限りの「禅譲の精神」がなくてはならない。性格的に「陽性の人間」は表面に出てもよいが、どうしても理論や技法は“陰性的となる”ものだから、沢庵も宗矩も西郷頼母も田中清玄も「陰性の人間」である。私(鶴山先生)も陽よりは陰が勝っているので、見習う必要がある。母星の運勢からみても3人の性格は納得できるものがある。
さて、ここからが本題である。新陰流兵法理論を確立した宗矩は沢庵から何を学んで、それをどう活かしたのかを解明する必要がある。
宗矩は兵法家伝書を著した。これは剣術と心得の極意を詳述したものであって、沢庵の言葉を多く引用している。その引用元となったのが「不動智神妙録」であり、禅で武道の極意を説いた初めての書とされている。