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沢庵和尚7

「徳川様は天下を平定させるため日夜努力されております。昔御坊からお聞きした“天治の剣”を目的としております。しかし、難しいもので目的は持っても、それを実行するには至難なことであると・・・近ごろは徳川様に師事しておりながら、この麻の如く乱れがちな世を見て、思うように行かず、心が乱れて自信を失います。」と又右衛門は最近の心境を語った。
「それは一も空、法も空になることだ。」
「といいますのは?」又右衛門は7年前秀喜(沢庵)に教えられた“治国の剣”の実行には何が必要かを聞いていた。
「空・・・といっても一言では明かされない。ただ、天地間に『正気』の気が磅礴(ほうはく=混じり合って一つになること)して動いてやまない。それは、文天祥(ぶん てんしょう:中国南宋末期の軍人、政治家)が、獄中で死を前に作った『正気の詩』によって教えられたというは・・・2年間、虚弱な体をもって天祥は獄中で遅滞病気もなく、凛烈な正節を立てて、俯仰(立ち居振る舞い)はずることのない立派な境涯を打ち立てられた。天地有正氣・・・との書き出しで始まる『正気の詩』は、まさに孟子の『浩然の気(人間の内部から起こる道徳的エネルギー)』を遙かに高く抜きん出てしまった。それこそ忠義の意気の磅礴するためじゃ!

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