武道の極意・秘伝集22
11不断の稽古にも、とにかく気を「先々」と出るべきことなり。立ち合えば直ぐに突くぞ・打つぞという気に成らねば成らぬものなり。受ける・留めるという気にならないようになすべし。直心影流は至極の剣術にて、一勝負ごとに折り敷き、又は両腕をだらんと下げてハッハッと大息をつき、立ち合えば上段に取り直ぐに打つ気合なり、終始先々と回りおるなり。又足は空におらず、地におらずというて、浮き足にて構え向こうの遠き間次第に飛び込み腰から出るを先の勝ちという。
補足説明:直心影流は、江戸時代中期に生まれた剣術一派で、流祖(山田一風斎)の時代から皮具・竹刀など防具の改良をしていた流派です。2代目(1710年ころ)になって面・籠手が完成し、これら防具による実戦式稽古が評判になり入門者が殺到したようです。当時は組太刀による形稽古が中心でしたが、一刀流中西派も防具方式を採用(1730年ころ)することになり、いわゆる「しない打ち」剣術が一気に広まったとされています。
この風潮は新陰流兵法にも大きな影響を与えています。尾張柳生家中興の祖と呼ばれる長岡房成は、当時流行していた「しない打ち」剣術に対抗(対応)する意図をも持って「試合勢法」を考案制定しています。伝統刀法(内伝)は護持しつつ、外伝としてより実戦的な勢法を整備し時代の要請に応えたということでしょう。
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