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極意秘伝のはなし22
制剛流の流旨は、その印可状から老子の「天下の至柔、天下の至堅を馳騁す」の理に基づいている、とされています。
これは、老子の徳経:徧用第四十三からの引用で
天下の至柔、天下の至堅(しけん)を馳騁(ちてい)す。
無有は無間に入る。
ここをもって、無為の益あるを知る。
不言の教え、無為の益は天下これに及ぶものまれなり。 とあります。
この大意は、「天下で(世の中で)最も柔らかいもの(水)が、天下で最も堅いもの(金属や岩石)を思い通りに動かす。形のないものだけが、わずかなすき間に入っていくことができる。
私はこのことから、無為が有益であることを知った。不言(言葉に頼らない無言)の教えと無為であることの益は、天下でそれに匹敵するものはほとんどないのである。」です。
制剛流の印可状によれば、「柔にして剛、剛にして柔、体用兼備する」ことを目標として、まず、柔の理を手縛から学び、柔剛・強弱の理を知っていくのである、としています。そして、二星之目付・残心・上中下之気・一呼一吸など15の口伝と共に印可する、とあります。
既述のとおり、制剛流は抜刀術を除き失伝したようですが、その門系が多岐に分かれたとされており、「俰 仕方口伝集」を見る限り、その技法の多くは(改変されながらも)他流柔術に取り込まれているように思います。