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大東流の口伝16

まず、ポイントは指の中では力のない小指と薬指をしっかり使う(指力ではありません)こと、たつの口を正中線上に合わせるためには親指の突き出しが必要なこと、その結果、親指と人差指の両側面がフラットになるのです。大東流的には万力手に近い形ですが、この手の形を変えずに操刀するのです。奪刀法(無刀取り)の際の手の形も同じです。そして、しないを振る(斬る)ときは、茶巾絞りの要領で手の裡を使います。この執刀法があったからこそ、介者剣術で、斬れない相手を制することが出来たのです。

以前、テレビで春風館に柳生厳周の手袋が残されていると報じていました。うろ覚えですが、鹿革で固い作りになっていて、はめると親指を突き出すようになると、説明されていました。厳周師の執刀法に合わせた手袋を作らせた結果、それは後世の我々から見ると矯正用の手袋に見えるということでしょう。
 
さて、朝顔は「第3の力」という術理を用いている、と既述しました。
第1の力とは第1方向のベクトル、第2の力とは第1方向とは違う方向のベクトル、第3の力とは第1方向・第2方向とは更に違う方向のベクトルです。これらは、相手がそのベクトルを認識することで成立しますから体のどこに通力しても、どのように通力してもよいのです。

例えば、相手が右中段突きに来たとします。我は、右手で相手の拳を肩口方向に押します(第1の力)、これを維持したまま、左手で肩口を斜め上方向に押します(第2の力)、これらを維持したまま、ひざを緩め相手を下に誘導する(第3の力)。この例では、右手と左手の押し、そして重心の移動という通力方法でした。

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