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武田惣角と大阪との関わりについて8

(承前 時宗氏の寄稿)朝日の猛者連が惣角を訪ねた時、惣角はステテコを着ていて背が低くやせ、腰が曲がり歯が一本もない姿である。一同はこれが今を轟く武道家かとあきれこの小男に会いに来たことを後悔し互いに顔を見合わせた。惣角は一同の心を察し平服に着替えして座布団を上座より縦に並べて敷き、更に下座に横に並べて敷いた。
惣角は、一同の中より一人ずつ指さし呼び出し上座より順々に座らせた。
上座に局長、部長、課長、係長、主任、下座に平社員を並べ、惣角上座より順番に名刺交換した。
これを見た朝日の一同は、初対面で役職がどうして惣角に判ったのか非常に驚き、惣角を心で侮った事も見抜かれたと思うと恐ろしくなり、あまりの恐怖に逃げ出したい思いがしたという。
これは、8月に来阪した私(時宗)に惣角が「私を小男と侮ったので合気で並べてやった」と言ったので、私が朝日の連中に聞いて得た事柄であり、私は惣角が合気で「並べた」ことの意味を理解することが出来た。(続)

補足説明:惣角に関する有名なエピソードの一つです。ただ、これにも脚色が入っていて、押し掛けてきた惣角が植芝盛平の師であることを植芝本人から確認し、惣角から指導を受けることになった後、関係者が惣角にあいさつに出向いた時の逸話です。惣角は時宗を帯同するに当たって次のように語ったそうです。「朝日は他の道場と異なり猛者揃いだから、褌を締め上げてかかれ」

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