植芝合気道の五教短刀取のこと
植芝合気道では第5か条(5教)に短刀取が組み込まれています。受けは短刀(懐剣の持ち方)で袈裟に突き下げ、仕手はこれを入身して受け1か条裏の如く制しているようです。
これは植芝盛平が大正11年に武田惣角から習った技法の一部で、合気柔術系合気柔術(柳生流柔術)の技です。竹下ノートにも懐剣術の記載があり、植芝盛平がこれ以外の技を習っていることがわかります。なお、竹下ノートには5か条に対する返技も載っています。
この第5か条は懐剣術に対する予防技が原形で、殿中において奥女中等からの不意の攻撃から身を守るための技法なのです。殿中において、奥女中は茶、食事等の接待時など要人の身近に接近できますから、このとき懐剣で暗殺されないための技法(心得)として教わるものです。
大東流合気柔術の教外別伝の懐剣術は、八重垣流小太刀術が基礎技法とされており短刀術(短刀取)とは別技法です。また、鉄扇術とも共通技法があり、単独操法から始まって、懐剣や鉄扇を用いて勝つ技、これら攻撃を破る技など体系化されています。
なお、日本伝合気柔術では、合気道技法として脇固め短刀(懐剣)取りの稽古も行いますが、一般技(1~4か条)における本来の第5か条とは、第4か条+1手の非常に厳しい(痛い)技法となっています。