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後襟捕のこと(下)

2左手で掴む場合
左手で襟を掴むのは懐剣術(素手対懐剣)である。懐剣は左の胸に付けてある、これを抜くと逆手(懐剣の握り方)となり、相手をつかまえないと刺すことが出来ない。そのため、左手で襟(女性なら髪の毛)を掴み鎖骨の間を刺すのである。これは、序の形=初伝であって、破の形=中伝は正面からすれ違いざま、後ろに回って掴む、急=奥伝ではすれ違ったとき襟を掴ませないで捌くという構成になっている。
道ですれ違う際は、一間半以上の距離を取るのが武士の常識であった。これは武家の婦女子でも同じである。相手が接近してきたら警戒しなければならない、別の道に避難できればよいが、ダメなら対応が必要となる、このための護身法なのである。
序の形では、反時計回りに回転し捌く技法と、敵の左腕下を後方に抜ける技法があり、敵が再び懐剣で袈裟に刺してくるところ、十字受(懐剣を抜く間がないから)し、一般技で制するのである。
なお、この技法を原型とした技は数多くあり、通常は素手対素手の捌きで稽古をすることが多い。敵は左手で我の後襟を掴み、右手は背後から我の左前襟を取る、このほか、敵は左手で我の左手首を掴み、右手で背後から我の襟、右手首を取るなどである。

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