新陰流兵法目録事6
では、ここで新陰流兵法の極意が詰まった「三学円之太刀」について、その技術論に軽く触れておきます。
一刀両段は、「七太刀」の1本目踞地獅子(きょちじし)が原典で、神道流の車剣を改良し、さらに陰流の猿廻を導入し完成された太刀です。打太刀の斬る角度・場所、仕太刀のハネ上げる角度など攻防の展開から形が練られていったのです。一刀両段は猿廻の意味(別稿で既述)を知らないと使えない太刀です。この他、体幹を捻らない、腕を使わない、軸を意識する、重心の移動をコントロールする、トウ骨尺骨を意識するなど重要な術理が学べる形になっています。打太刀側も仕太刀の崩し方(柔術テクニック)を教えています。これを見ておわかりのように、これはもう体術そのものです。たまたま剣を持っていてこれを用いる、象徴的に剣を使って体術を教えるという形だと思います。
斬釘截鉄は、流祖が集めた勝ち口集である「二十七箇條截合」の摺巻入(すりまきいり)が原典で、神道流系の太刀です。この太刀は身を沈めて捌くという介者剣法の特長が現われています。斬釘截鉄には極意打で勝つ方法と神妙剣で勝つ方法があり、石舟斎が導入した神妙剣が直立たる身の位の内伝に継承されています。この太刀においても、体幹を捻らない、両腕をセットにしてひじを伸さない、お辞儀をするように捌く、両手と体幹の一体的な使用など、体術的技術が重要です。