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大東流の口伝23

さて、霞之事です。霞当では、目・鼻中・秘中などの部位をねらうことから、稽古では実打できませんが、この当てないというところに秘密があります。霞には「ぼんやりとする」という意味もありますから、霞当では相手がぼんやりすれば、よいのです。そうすると、例えば、相手の目の前を我の手が通過する、これだけで相手は崩れます。

一般的な当身の効用として「気を散らす」ということが言われます。
例えば、手首取りされたとして、そこを動かそうとしても難しい。そこで、足を蹴ると相手の注意・意識はそちらに向きますから、掴んだ手の方がお留守になる、その間をねらって手を捌く、などです。相撲でたまに見られる「猫だまし」も同類のものです。これらの大きく、強い刺激は、確かにビックリして気を散らされますが、それだけです。つまり、何が起きたかわかるので、直ぐに我に返ることができる、ということです。

一方、霞は「ぼんやり」している、つまり弱い刺激だということです。
微細な刺激があると、頭は無意識下で何が起きているのか?と情報収集及び分析を始めます。
 害虫か何か留まっているのではないか?
 危険な異物に触れているのではないか??
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・??? 
これが、持続的な刺激だと、無意識下の頭は処理能力を超えフリーズしてしまいます。つまり、「頭が混乱」させられた状態になるのです。そうすると、自分の姿勢を維持するための計算と指令がおろそかになり、不安定になってしまう、つまり崩れるということです。

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