槍と合気道28
引き続き「槍と合気道」「刀と合気道」「書と合気道」からなる3部作の引用です。
書と合気道 東京朝日カルチャー 関野直輔
書道史によると、篆書に次いで隷書が出来、隷書の省略体として草書が成立し、次に行書、最後に楷書が定立されたことになっている。
中国では、新しい順に楷行草の順に手習いするが、我が国の流儀書道では行書を先に習う。楷書や草書を習う前に行書を習えば、筆の運びは太く円くなめらかで年少の者でも早く上達する。これは小野道風の「屏風土代」や「智証大師諡号勅書(ちしょうだいししごうちょくしょ)」以来連綿として続いている日本の書の伝統的な書き方である、とのことである(中田勇次郎著『日本の美術・書』69~70頁)
これを合気道に当てはめてみると、楷書ではなく行書のように、円く・やわらかく・なめらかな動きから初心者は入るべきではなかろうか。行書のような円く・やわらかく・なめらかな動きによって、合気道は直接的な動きをする槍や近代スピード剣道に対応しようとしているのであろうか。
以上のとおり寄稿のそれぞれが槍・刀・書と合気道をからませた巧みな評論で、その発想はユニークであるばかりではなく、一定の水準をはるかに超えた密度の濃いものでありました。折から筆者(鶴山先生)も丁度大東流の本当の実像を公開する機会を狙っておりました。
関野氏は、合気道は古武道であるとする前提条件で論じておられますが、この前提は一般認識における合気道感とは異なっているものです。そこで「合気道とは何か」を説明することにより、一般認識との差を埋め、そこを基盤として、合気道と大東流の関係、大東流と諸流派古武道との関係を一般に理解していただけるよう、連載しているところです。