武田時宗・宗家独占インタビューについて21
大東流合気柔術総伝譜5
(承前)実技を全然知らない方に対する“合気”の説明に、惣角はよく武田流兵法を例に使っていた。山梨県塩山市郊外の雲峰寺に現存する武田信玄が軍旗として用いたと伝えられている「風林火山」をさかんに引用していた。
疾如風徐如林侵
掠如火不動如山
合気の技は、疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し、群青色の絹の大布に金泥で書かれたこの言葉は、「孫子の兵法(軍争篇)」の一節であるが、いかにも新羅三郎義満の伝えた合気術の秘法を称えた言葉にふさわしいもので、武田流兵法では武技としてだけの“合気”ではなく、森羅万象のことごとくが“合気”であるとも解している。
武術としての“合気”は、気力を一瞬に集中し、相手の身体の自由を奪い、相手の力を充分に発揮させないで、自己の思うままに操作が出来る技である。この掛けられた技を第三者が見ていても、全く動かざること山の如し悠然としていて写真や説明では到底理解が出来ないものであるが、大東流の技を少しでも知っている者であれば、この新羅三郎以来の術技が「風林火山」で知られている武田兵法といかに関連が深いものであるか知ることが出来ると思う。(続)