武田時宗・宗家独占インタビューについて23
武田時宗『武田惣角見聞記』を読む1
近世武道史上、不出世の天才といわれた武田惣角氏は昭和18年4月25日青森市浪打町伊藤旅館にて84歳の生涯を終えた。
惣角氏の道業が余りにも偉大だっただけに、一時「大東流は終焉ではなかろうか」という声さえ武道界の一隅でささやかれたが、令息時宗氏が道統を受け継いで以来20年の今日に至って惣角氏相応の秘技が赫奕(かくえき:光り輝く)とらて沈滞した武道界に輝きはじめたのである。
それにしても、惣角氏の事跡は断片のみが発表されて全貌が明らかにされていないうらみがあった。
今春(昭和42年)武田時宗氏が現職(山田水産工業株式会社取締役)の社用で上京したおり、宿所である新宿の某旅館を3回ほど訪ねたが、話しは東京の合気道界の近況から始まり、最後は惣角談で別れるのが常だった。
たまたま時宗氏の『武田惣角見聞記』を見せられたのも同氏が離京前夜のように覚えている。
武田惣角氏の事跡については、拙著『日本武道の源流』の大東流の章に発表してあるから、私の知った“惣角像”というものの大体のアウトラインは世に紹介したつもりでいたが、出版社の都合で刊行が遅れているので、その責を果たす意味から同氏の見聞記の発表を強く熱望したのだった。(続)
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