大東流の口伝5
すなわち、口伝5ヶ条を自立的(相手の状況は無関係)に使えば柔術となり、一旦相手と一体化(する手段として)してから使えば合気柔術となるのです。そして、その合気柔術の一部の技法を象徴的に合気之術と呼んでいるのです。これで大東流三大技法の全体をとりまとめる口伝につながりました。
大東流三大技法とは、剣術や柔術などの古武術が有効な社会資源だった時代、世襲制を前提に実践武術として教育武道として、いわば職階制を取り入れ整備されたものです。対象者や目的が異なる三大技法、技法そのものに優劣はありません。当初の構成からは柔術・合気柔術・合気之術のそれぞれに皆伝者がいる想定でした。
ところで、鶴山先生の主張は表面的には、柔術系合気柔術より柔術の方が、それより江戸柳生系合気柔術の方が上、であるかのような印象を受けますが、技法を学ぶべき対象者の違いを強調していただけであって、技法はそれぞれを尊重し、重視していました。その証拠に、大東流柔術第1か条の履修は「合気柔術初段」の条件だったのです。柔術未修の人は同じ初段でも「合気武道初段」と区別されていました。