大東流の口伝9
相手を不安定にさせる、という技術は重要なものですが、多くの方は誤解しているのではないでしょうか? その誤解とは、自分は安定していて、相手だけを不安定にするのだ、と・・・。
イメージで言えば、サスペンスドラマの一場面を想像してみてください。
相手は断崖絶壁の端で背を海にして追い詰められていて、おっとっと状態、対して我は陸側で安心(安定)して相手を突き落とそうとしている、
という感じでしょうか。このような崩しが出来れば最高ですが、実際にはドラマのようには上手くいきません、難しい。
そこで、大東流では次のように教えるのです。自分が不安定になることによって、相手を不安定にすることができる、と。この自分を不安定するための方法の一つを巴卍之事として教えているのです。
ところで、ヒトは直立二足歩行という、本来不安定な移動様式を採用しました。体重の7%の重さがある頭を上部に配置し、最小限の構造で支え、しかも歩行しようするわけですから、倒れないように、体が安定するように、頭のコンピュータは常に計算しています。本能的に安定を志向しているのです。
このようにヒトは自分が不安定になることを避けようとしますから、意図的に自分を不安定な状態に置くことは、意識的に練習しないとできません。そこで、巴脚・卍脚を使う稽古を通じて、自分が不安定になる=相手も不安定になるということを覚えるのです。