武術の稽古方法-宮本武蔵と新陰流兵法-2
このように、武蔵の説く道は、個性啓発的な教授法といえます。いわば「人に依って法を説く」のです。他の流派が採用していた入門に際し誓紙罰文を提出し、表(入門段階)から数段階を経て極意・秘伝に至る免許制やこれに伴う秘伝意識を批判しています。言い換えれば伝統や権威を否定している、ということでしょう。
このことについては、『五輪書』の序文において、記載に当たっての留意事項として次の4点を掲げ、自らの体験に基づき自らの言葉で書く旨、宣言していることからも明らかでしょう。
①一切の事柄において自分に師匠はいないこと
②仏法や儒教の古い言葉を借りないこと
③軍記や軍法の古い事を用いないこと
④天の道と観世音を鑑としたこと
一方、新陰流兵法は法型第一主義で、免許制(伝位制)を採用し、権威を活用しているなど、まるで武蔵が批判するところの流派そのもののように見えます。
では、新陰流兵法の教習課程はどのようなものだったのでしょう。これについては、尾張柳生家中興の宗師と呼ばれる長岡房成(桃嶺)が著わした『刀佱録(とうほうろく、佱は法の秘字):教習篇』の教習課程に詳しいので、これを参考に紹介します。
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