北辰一刀流と北斗七星(下)
このようにして、最低13年はかかる、剣術の師範(目録・免許)を3年程度で取得できるようにしたのである。
ところで、周作が師事した中西派は、刃引きした太刀を用いた古流剣術から離れ木剣や竹刀を用いた稽古法に変えたのである。そうすると、稽古の目的や方法も変わってくる、面など防具の装着によって安全面が確保されると、より積極的な打込みや試合が可能となる。そうすると、相手の構えとは無関係にいかに速く打突するかが目的になる。そして、これには目標が必要でそれが、面であり・喉への突きであり・小手であり・胴であった、ということだ。周作は、この方法を一歩進め、竹刀打込み稽古法自体を目的とした剣術を創始したのである。言い換えると「後の先」の小野派一刀流から「先の先」の新剣術へと変えたわけで、この時点で古流剣術とは異質なものになったのである。
組太刀によって体の使い方・間合いの把握・駆け引きのシミュレーション等体得してきた武術としての古流剣術の稽古法を捨て、スピード・タイミングを重視したいわばスポーツ剣術に変質した。そして、この稽古法が多くの支持を得て、千葉道場の繁栄につながったのであろう。