呼吸体操の秘密(中)
ところで、ここでいう合気柔術とは江戸柳生系合気柔術(合気道の源流)のことで、新陰流兵法が基礎にあることはこのnoteで既述したとおりです。その上位の技法である合気之術も当然、江戸柳生系ということになります。呼吸体操の中には、このことを証明する技法があるのです、おそらく鶴山先生はご存じなかったと思います。それは一本捕の形です。いわゆる1か条ですが、普通の1か条とは手捌きが異なるのです。習った当初は、なぜそのような手とするのか不思議に思ったものです。
実はこの技は、柳生十兵衛三厳が考案した十兵衛杖の第一(母勢)速死一本(そくしいっぽん)という技と全く同じなのです。呼吸体操には杖を用いた捌きもあり、杖対太刀の組形の場合「速死一本」と同じ形となります。なお、十兵衛杖は「新陰流仕込杖遣様目録口伝書(柳生三厳著)」が現存しており5本の形があります。新陰流杖術第九世渡辺忠成先生は、その教本において「柳生三厳考案の十兵衛杖は、特異なる杖術である。他流杖術が槍術や棒術等より発展して形成されたのに対して、この十兵衛杖は剣術をその源としている。柳生石舟斎考案に成る奪刀法に於いては、無理して素手で奪刀するにはあらず、近くに得物があれば、それを利用するのも、奪刀法と心得よとの教えが有る。十兵衛杖は、これを象徴したものであり、その究極は奪刀法にある。」と解説しています。「武芸流派大事典」の柳生流の項によれば、柳生十兵衛三厳からの系譜に会津藩柳生流があり継承者の塩田荻之丞昭博(水野新当流柔・居合の継承者でもある)から依田重蔵勝英を経て西郷頼母につながる流れがあり、十兵衛杖の技法が大東流に組み込まれたことは想像に難くないことでしょう。
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