大東流と無刀取り9
では、新陰流兵法ではどのようにして無刀の位に近づくのでしょう。
今に伝わる尾張柳生家の教習課程は、この無刀取り(奪刀法)に関しても、優れものです。
まず、新陰流兵法の稽古法について、触れておきましょう。
新陰流兵法では、「韜(ひきはだしない)俗に袋撓(ふくろしない)」を用いて稽古します。多くの古流が木刀という制約条件の下で稽古を行う中、柔らかい袋しないを用いることで、小手など実打し、相手をとらえる・崩すなどその精妙な触感を醸成することができるのです。当たっても(打たれても)怪我をしない、だから存分な稽古が可能なのです。これが前提。ちなみに、袋しないの考案者は流祖、原形は太刀の鞘袋と伝わっています。
さて、本題の教習課程です。その骨格を整理すると次のようになります。
両手で操刀→片手で操刀→片手で操刀+手捌き→素手(無刀)による捌き
大太刀→小太刀→手刀
太刀による斬り合い→無刀取り(→諸道具の活用)
具体的には、大太刀(定寸の袋しない)で基本の勢法を学び、間合等を覚えます。この間合も最初は打太刀が教え、次に仕太刀が自分で判断する、という手順です。勢法の中で入身を、片手による捌きを、と稽古していきます。そして小太刀(袋しない)を用いた勢法で仕上げの稽古を行い、奪刀法に入る、という手順なのです。
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