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「兵法百首」から読み解く「新陰流兵法」17

神妙の 観見使う 兵法と 太刀の通い路 守る関守
敵の太刀 乱るる時ぞ 神妙は 焙烙(ほうろく)千に 土一つなり
身の位 神妙剣を とる習い 又座をとるも よしとこそ聞け
無刀にても 神妙剣に 行ならば 敵の打つ太刀 身にはあたらじ
真実の 神妙剣の 兵法を 使う人こそ 至るうえなれ
神妙に 心をかくる 所こそ 真の水月 真の水月
人間の 五躰は 心の使わしめ 太刀は心の 連れてこそゆけ
補足説明:神妙剣の教えです。神妙の剣とは、我が身から1尺先の当たらないところ、敵の手の1尺手前、合わせて両1尺での攻防のことです。神とは魂(たましい)のことで、天地の間に性を受ける者にはすべて魂があるから、この中にある種々の所作を外に顕して妙をなす。魂が抜けないように臍下に治める、と説かれています。言い換えれば、心の働きの微妙さを太刀に即応させる境地ということでしょう。攻めては通り路を自在に、守りに使えば関守にも劣らぬものである。敵がどの方向から打って来ても、神妙剣の座の通りに打ち止めればよい。敵が神妙剣を隠しているときは、こちらから仕掛け神妙の見えるところによって勝つ、これを座を取るといいます。
なお、神妙剣(狭義)の具体的な勢法は、いわゆる廻刀技法で瞬時に敵を封じる技です。太刀で敵を封じるには刀棒(とうぼう)がよいのですが、手幅が広く素早い廻刀には不向きなことから通常の執刀法による技法として整備され現代に伝わっています。

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