秘伝・合気道 堀川幸道口述 鶴山晃瑞編 13
武田惣角大先生が全国各地に普及された大東流合気柔術は、教伝を受ける方の体格の大小、性格、体質等に合わせそれぞれのタイプ向きに技の一部を伝承分けしておられた模様で、現実に私が指導を受けた合気術と植芝盛平先生や久琢磨先生が習われた技法はそれぞれ異なっています。
その一方の気合術の伝承を受けた先生方は少なくなり、現在では立川市におられる佐川幸義先生、現宗家の武田時宗先生のお二人となっております。
現大東流第36代宗家武田時宗先生は、戦後全国各地に分散してしまった大東流技法の統合集成を企て、長い間をかけて旧惣角門人である諸先生尋ね歩き、その全容を把握されたのです。
惣角先生直門下の一人として、ご子息である武田時宗先生の長年のご努力に対し敬意を表わすとともに、先生の成長ぶりを頼もしく思っております。
解説 この記載は奇しくも時宗が皆伝者ではないことを示しています。
久琢磨も皆伝の口伝を受けた際「僕は、武田惣角先生と同じ方法で鶴山君にこれを伝える。武田先生は記録等残すなとは言われなかった。また、別に時宗氏に伝えてくれとは頼まれなかった。」と鶴山先生に語っています。
大東流合気柔術乾之巻第7条秘伝に多人数捕があります。この内の一本について、鶴山先生のメモに「武田時宗氏がよく写真発表しているものに、両手持小手返の写真がある。どうやって両小手を捕らえるか、その後どうなるのか分からないよう配慮されている。また、演武会でも一度も発表されたことがない。これは時宗さんの秘伝になっているからである。この両手持ちは5本ある。時宗さんのところは、この内1本だけである。」とあります。
この秘伝両小手返は5か条の内の1本目のことで、2本目(小手返+2か条)、3本目(両腕絡)、4・5本目(前後形)となっているのです。
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