娘とポケモンガオーレ ~レックウザふたたびコース~
“目標は要領よく目指す” ― ウォーレン・バフェット ―
【腕白小僧】
土曜日の朝だ。
今日は長男のサッカー送迎など色々あって忙しい。しかし明日は日曜だというのに仕事でさらにタイトなスケジュール。
ポケモンガオーレに行くなら今日しかない。娘よ今日しかないぞ!
日曜のタイトなスケジュールの合間に突発的にポケモンガオーレに行くという予定など入れようものなら、臨機応変が苦手な我が女将さんから制裁が発動される可能性が高くなる。
無条件制裁緩和には今の状況に慣れさせるしかない。
いつ身に付けたのか記憶は定かではないが、相手を根負けさせるのは得意技の一つである。そう・・・ポケモンガオーレに行く事は普通なのだと刷り込むしかないのである。
サンダルで富士山登山に挑むぐらい困難な話ではあるのだが、可能性はゼロではないであろう。
【娘の動向】
さて、土曜の朝に娘がいつ『ポケモンガオーレに行きたい』と言い出すのか・・・。
楽しみにその一言を今週も待つ。
今朝も娘の起床は早い。けっこう寝室は暗いのによくぞ起きれるものだと想う。
さぁ・・・いつパパを呼びに来ることやら。
パパのとこに来ない。
パパのとこに全っ然来ない。
まるでトンカツにかけた後のレモンの残骸のように、その存在すら認識されていない感じである。娘がポケモンガオーレを卒業したら搾りかす並みに用済み認定されそうで怖い。
布団のぬるま湯に浸りながら、我が行く末を案じずにはおられない。
【LEMON】
娘が言う。
『今日はガオーレ行かなくていいから』
え???今日はレックウザふたたびコースがオープンしてるよ・・・
いや、行きたいでしょ??
先週あんなに娘にレックウザコース開設の情報提供して刷り込んでおいたのに・・・。
いや、行こうよ・・・。パパはさすがに一人で行く勇気はないじゃない。
レモンの絞った後の残骸が自分にかぶる。美味しい汁を抽出したら後はゴミ。
ああ・・・娘よ。パパをおいて行かないでおくれ。
しかし娘の行かない発言は杞憂に終わる。一時間後には『ガオーレ行きたい』と言い出したのである。
【幼児期】
ママ『は?行くの?今日行くって言ってたの?(微怒)』
『いや、何も言ってないけど・・・』
『先週から、何とかってコースが開始されるとか言ってたし・・・(軽怒)』
『レックウザふたたびコースね』
『何でもいいけど、で、行くの?しかも今から?お昼ご飯はどうするの?(やや怒)』
『ん~何か今から食べさせてから行こうかな・・・俺は遅かったからいらないけど』
『作る方は色々考えないといけないけど、気楽でいいわね(まぁまぁ怒)』
『・・・』
『はぁ・・・(けっこう怒)』
しかもこんな時に限ってゆっくり食べる娘。もっと早く食べろ。もっと口にかきこめ。もっとささっと食べろ。将来サラリーマンになるのなら5分で飯を食べるのだ!早くこの空気から脱出させてくれ・・・。
と、決して表情にも雰囲気にも出さず心の底から願うが、想いは届かない。
恋愛未経験中学生男子の片思いの様相である。
幼児とは思い通りには行かないものなのである。
幼児期の息子は、娘の賢さ具合と違い特に面白かった。
電車に乗る前に『おしっこないか?』といつも聞く
息子『ない』
『ほんとにないね?今しとかなくても大丈夫?』
息子『ない、全然ない』
電車に乗る
息子『おしっこ!』
『・・・』
だから言ったのに、聞いたのに、なんで済ませておかないの?とかくどくど言ってもしょうがない。次の駅で降りて、おしっこさせて、また次の電車に乗るだけだ。
幼児の思い通りにいかなくて困る事を逆に楽しみにできないと、子育てはイラッときてしまう。しかしどんな親にも似たような時期は多かれ少なかれあったはずなのである。幼児期のイラッ!なんて長い人生のほんの一瞬である。
今を我が子と楽しむのだ。
しかし、早く食べてくれ・・・。
【神龍】
いよいよメガレックウザ獲得の為のバトルが開始される。
シェンロンを自分のポケモンと闘わすのは初めてだ。
まず一戦目はでてこない。想定通りルガルガンの育成を兼ねて頑張る。二戦目もでてこない。まぁこんなもんか。ルガルガンがグレードアップしたので久しぶりにディスクゲットボーナスで叩きまくる。
期待の3戦目。
『パパ出た!』
『お~これがレックウザか・・・欲しいね』
『勝てるかな~』
『ドラゴンには何が効果的なのかな』
『ま、取れなくてもいいよね。またやればいいし。』
最初から取れなくても落ち込まないように娘は自分に言い聞かせるかの如くだ。なんてしっかりしているんだろう。
メガシンカレックウザ・・・内心すごく欲しい。
後ろに一組いるので冷静に沸々と物欲だけ漲らせる。
しかしこの想いは自分だけではないだろう・・・子供そっちのけでパパが本気で叩いてる親子もよく見るので、意外とお父さんが本気の家庭も多そうである。ディスクゲットボーナス時に決死の形相で叩いてるパパを見ると安心する。子供をネタに楽しんでる事に共感できるのである。
捕まえたい。難しさレベル3なので何とかなりそうだが・・・。
対戦する。宇宙まで飛べるのか・・・なんて凄いパフォーマンス。こりゃかぐや姫どころではない。娘も何かしら感じているのか・・・いつもより無言で攻める。
いよいよ神聖なるゲットタイムが訪れる・・・先輩のイメージが踊り出るが、そんなうまくは出ない。娘の祈りも通じなかったようだ。
なんとか・・・せめてスーパーボールでも・・・。
『あ』
『あ~』
『モンスターボール・・・』
落胆は隠せない、思わず声に出てしまった。
キュル・・・1回転
キュル・・・2回転
キュル・・・3回転
無言で画面を見つめる・・・目が離せない。
カチ!!
『え?』
『え?入った!』
『やった!』
『うわ~』
思わず声がでてしまう。パチンコで10連チャンがきて、あんまり顔に出さずに打っていても思わずにやけるあの瞬間だ。
なんて渋いじゃないか・・・次からレックウザを登壇させたらモンスターボールで登場だ・・・渋い。ホタルイカの天日干しレベルだ。
絶対無いなと思っていたので、嬉しさを味わう余裕もなくGETしてしまった・・・これがハイパーボールならどっちに転ぶか分からないので緊張も甚だしかったであろうが・・・。
そこだけが少し残念であるが贅沢な悩みであろう。
娘の笑顔も最高潮だ、なんせモンスターボールで☆5はおそらく初である。
いきなり初回からGET出来たので、もう一回だけ並んで、娘の好きなまぼろしコースに挑む。ここでも2戦目、ハイパーボールですんなりメロエッタボイスフォルムをGETする。3戦目にメガディアンシーとマギアナが出て驚くが、共にモンスターボールで獲得ならず・・・。
しかし、今日はこの函に流れが来ている・・・。ミスターマリックが脳裏をよぎる。きている。
しかし、早急に帰らないと女将さんが激おこプンプン丸になるので。後ろ髪ひかれるが今日は辞めておこう。
あと一回挑めば、何か取れる流れであろうなと想いながら、娘はレックウザとメロエッタを握りしめ・・・パパはスイーツを買い、女将の待つわが家へ帰宅したのである。
“夫が妻に『理由』なくスイーツを持って帰って来る時は、『理由』があるのだ”
― 旦那 ―
“オミトオシ”
― 嫁 ―