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そのペット、誰が飼いたいのでしょうか?

1 新学期はペットを飼いたくなる時期です

4月になり、新学期が始まります。筆者の聞くところでは、この時期に合わせて引っ越しをされる家庭が多いようです。新しい学校に途中から入学するのは可哀そうという親御さんの配慮です(その点、当家は時期などまったく考えずに転居を繰り返していますので、子供たちは気の毒だったと思います)。そうして、学校にも慣れ、庭のある一戸建てだと大型犬、ペット可能のマンションだと小型犬を飼いたくなるものです。

2 飼いたいのは、誰?

さて、ここで一つ疑問が生じてきます。

  1. 本当にペットを飼いたいのか?

  2. その犬種や猫種でいいのか?

  3. そもそも誰が飼いたいのか?

  4. 世話の主な責任はだれなのか?
    これは案外家庭内で見落とされがちな問題です。転居する(もしくは家を買う)⇒なにかペットがいた方がいいような気分になる⇒ペットショップやブリーダーに行ってみる⇒飼ってしまう
    というのがどうも定石であるようで、上記の1から4までを真剣に議論せずに飼う人が多いのです。いえいえ他人事ではありません。私もごり押しでたくさん犬を家庭に持ち込んできた一人です。

しかし、この議論をして、全員が納得しないと先に進めないどころか、家庭の不和を招いてしまうことが多々あります。よく話をしてみると、本当はペットはどうでもよかった、ということがよくあります。また、ペットをせがまれている親御さん、特にお母さん、今、

「ペットの世話は自分がするから!」

と言っている子供は、そのうち部活や塾で帰りが遅くなるのです。子供を信じてはいけません。

3 ペットは幸せの象徴ではありません

確かに、家を新築して犬や猫を飼うのは、長年の夢だったという方はたくさんあります。しかし、頑張って買ったゴールデンレトリバーが、あなたの家庭に幸せをもたらすのではありません。
もたらすのは、季節の抜け毛と体重に応じたフィラリア薬の代金、ワクチン代金と散歩の義務です。
もちろん犬からのかがえのない信頼も得ることができます。筆者がたくさんの飼い主を見てきて、ここでお伝えしたいのは、「様式を満たせば結果が出るのではない」ということです。家族一体となっての世話、散歩の分担、毎日のブラッシングがあってこその幸せです。そこを勘違いしないでほしいのです。
もうひとつ止めてほしいのが、おじいちゃん・おばあちゃんがポケットマネーで買う犬と猫です。同居の場合は先に話し合いがあれば問題ありません。孫可愛さに「買ってあげよう」と言い出すことです。どんなに親しくても、同居でない人たちが、犬を飼う家庭の詳細を知っているはずはありません。
動物をプレゼントすることが、そもそも僭越な行為だと筆者は思います。また、たいていの場合、こうしたペットは後になってあまり世話をされなくなるものです。

4 飼いたくて、飼いたくて、飼いたくて仕方がないものを飼おう

拙著「こんな動物のお医者さんにかかりたい」で強く解説しているのはこういうことです。犬や猫にとっては一生、人からみても12年ほど一緒に暮らす伴侶は、1年くらい考えて飼っても遅くないと思います。その間に品種についての情報も得ますし、良いブリーダーに会えることもあります。
家庭内でけんかになるくらいの議論の末、手に入れた犬や猫は必ず大事にされます。家ができたからとか、お金が入ったからとか、そんな理由では足りないのです。そこをぜひご検討いただきたいと思います。

似内惠子(獣医師)

(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/

ブログ「獣医学の視点から」

オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/


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