百歳生きる時代はペットにも及ぶ・その2
1 百歳時代にどう対処するか?
10年以上生きる犬や猫が普通になってくると、飼い主も心構えが必要です。ペットも人と同じで、若かった頃に比べて病気やけがが増え、動物病院に行く機会も増えてきます。すなわち治療費がかかります。飼い主は自分もあれこれ治療しながら、犬や猫の治療費も必要になるのです。
ペットを最期まで見取ることができるかや、高額な治療費となると、それを払えるのかなどの問題がのしかかってきます。
そんな時に頼りになるのが、ほどほどの価格で、ほどほどの治療をしてくれる動物病院です。病院の探し方は拙著「こんな動物のお医者さんにかかりたい」で詳細を説明しています。
また、最近は動物の保険も充実してきました。そちらも検討されることをおすすめします。
2 自分に都合の良い判断をしない
犬猫の伝染病は、他の犬と接触しなければかからないというものではありません。他の犬猫の排泄物の匂いを嗅いだだけでも感染することがあります。感染すれば治療費はワクチン代以上にかかります。昨今のワクチン不要理論は公衆衛生・伝染病学の上から全く根拠のないものです。
ワクチンを打つとその費用がかかる⇒
打たないという理由をweb上で探したい
という飼主の考えが根底にあるようですが、社会的責任を果たさないというのはどんなものでしょうか?
特に狂犬病ワクチン接種は飼主の義務です。
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狂犬病予防法
第五条 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。
2 市町村長は、政令の定めるところにより、前項の予防注射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の注射済票をその犬に着けておかなければならない。
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動物病院は自分たちが儲けようと思って、ワクチン接種を勧めているのだという考えは間違っています。「防疫」という観点からワクチンの必要性を説いているということをご理解ください。
3 ペットが自分より先に死ぬこともある
より深刻な問題は、飼主が高齢になった場合、そして死去された場合、残されたペットはどうなる?ということです。いろいろなご家庭を見て、途中から飼われたと思われる犬猫がいるので、「これはどうされたのですか?」と聞くと「親戚が死んで、残された犬(猫)を引き取りました」という答えが返ってくることがよくあります。
まだこうして引き取ってもらえるうちは幸せです。もっと気の毒な状況になることもあるでしょう。難しい問題です。
家族間で話し合って、残されたペットをどうするかを決めることは必要です。早いうちに飼ってもらえる人のあたりをつけておくことも必要です。決められない方は、自分がいつかは死ぬという事実を受け入れられず、対応を先延ばしにされているのでしょうか?
英国女王陛下の飼われていたコーギー犬も、ご子息が引き取られたと聞きました。
飼主もペットも高齢になってゆく時代、終活も複雑な様相を呈してきます。
似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長)
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」
オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/
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