同窓会なんか行くもんか
「ハガキが届いてます」
母からLINEが来た。
保険やら奨学金やらを何年も住所変更しておらず、俺への書類が実家に届くことがある。その度に、母は写真付きでLINEを送ってくれる。勝手に開封することもあって、それはちょっとやめてほしいけど。
また保険のお知らせかな?と思った矢先の「〇〇中学校同窓会開催のお知らせ」母には申し訳ないが、返信をする気にもなれなかった。ごめんなさい!
裏面のアップが送られてきた。母が送ってくる写真をいつもブレブレ。
「日時:12月〇〇日」
あのさ、年末年始なら帰ってくるでしょ?みたいな考えがイラっとする。そんないい子じゃないんだよ。「ひさしぶり〜!元気?」って言える友達もいないよ。
「幹事:〇〇〇〇 / 〇〇〇〇」
幹事って2名もいるんだね・・・男2人・・・ゲイカップル?だったら俺もそうだわ。奇遇ですね。
名前なんて書かれたら、気になるじゃん。やらなきゃいいのに2人の名前をググってしまった、最悪。
1人はどうやら報道制作関係(あんまりはっきり書くとばれちゃうので濁します)で働いているらしい。彼はテレビとかラジオとか、そういうのに興味がある人だったから。誰にでも分け隔てなく、いい人だったのも覚えている。お金持ちで夏休みには家族で海外旅行も行ってた。スポーツもできて、頭も良くて、おもしろくて、そんな完璧な人ってこの世にいるんだ。
もう1人は大学で野球を続けていたらしい。大学時代のユニフォーム姿がGoogleの画像検索から出てきた。友達に囲まれて、男らしく肩を組んでいた。正直、彼のことはあまり覚えていない。でも、その笑顔こそが今も成功してるんだなって未来を予想させるものだった。
2人ともなんとなくキラキラしていた人だった。
そうだ、彼らは眩しかった。
そして、俺は彼らの影だった。
中学時代のことを思い出す。俺はいろいろあって中学には途中から行っていなかった。行けなかった。もうあの時の事を忘れてるつもりだったけど、過去のことって意外と覚えてるんだよね。
あの人に言われた嫌な事、あの人にされた嫌な事。思い出したくないのに思い出してしまった。彼らの顔はぼんやりとしか覚えてないのに、目や笑い声は覚えている。
光は影の存在をしらない。知る必要なんてない。でも影は光の存在をよく知っている。いつも光をを見上げていた。キラキラしてて、手を伸ばしても届かなくて。影はじっとりしてて、嫌な存在だ。自分こそが嫌な存在だった。
どうして道をはずしてしまったんだろう。どうしてしっかり学校に行って普通に友達を作って、普通に進学して、普通に卒業できなかったんだろう。普通に結婚して、普通に子供を作って、普通の家庭を作れなかったんだろう。
後悔してるのかもしれない。
今、俺は男の人と東京に住んでいる。友達だっている。
ここに生活がある。絶対に過去に戻ったりしない。
今の自分が一番輝いている、そう思いたい。