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人生は後半戦がおもしろい

「理念と経営」3月号で取材した葬儀業の経営者S氏(58歳)は、2年前にご長男に社長を譲りました。2年前ということはS氏はまだ56歳。引退するには早すぎます。その通り、早すぎるのです。

では、社長を譲って何をするのか? 会長職(代表権もなし)に就いたこのS氏は、なんと僧籍を取得。え?出家ですか? いえいえ違います。葬儀業の新しい形として、永代供養を引き受けるようにしたからです。自前の葬儀会館の隣に納骨堂を設けているのです。

S氏は、「家族葬」という言葉がまだなかったころから、家族葬に特化した事業展開をしてきました。ようやく最近、大手の葬儀会社も家族葬専門の葬儀会館は出すようになりました。しかし、S氏曰く「私に言わせれば、家族葬はもう『賞味期限切れ』」。そして、次の一手として納骨堂&僧籍取得に動き出しているというわけです。

そういえば以前、築地本願寺のカフェ(朝食で有名!)に行ったとき、目の前の建物にひっきりなしに家族連れが出入りしていて、「あの建物はなんや?」と思っていたところ、それが納骨堂で、お墓参りに来ている方々だったと後で知りました。このとき素直に「お墓がこんな都心にあったら、遺族は便利だし、故人も安心するだろうな。こういう時代になったのね」と素直に納得したことがあります。

30代のご長男に潔く社長を譲り、自分は違った角度から会社の事業をサポートする。これって、中小企業の事業承継の理想的な形ではないでしょうか。S氏の好きな言葉は「人生は後半戦がおもしろい」。その通りですよ。58歳は、引退にはまだ早すぎます。しかし、トップに君臨し続けていては、会社の新陳代謝は進みません。これぞ、人生100年時代の事業承継だと思いました。

#理念と経営 #人生は後半戦がおもしろい

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