俺と革 5章
5章では、グラブ革のキップの誕生の話でと思っていたが、工場見学でしか聞けない話として取っておくことにした
悪しからず(_ _)
さて、何の事を書こうか…
サブタイトル 『今だから話せる昔話』
昔、あるところに牛の皮を鞣す仕事をしてる不良少年がいた。
少年は仕事が嫌いだが、仕事をすれば真面目に勉強したそうだ。
ある日の事、少年は昼間から遊んでいたのか、仕事を終えて来たのか解らないが、ある所で酒を呑んでいた。
そんな時、一本の電話が鳴った…
少年とは180度違う出来の良い妹からだった…
『工場が焦げ臭い…』『火は見えないが、やばそう…』と。
少年は本能的に店を飛び出し、ロバに股がって信号もあるにも関わらずノンストップで工場の元へと駆けつけたそうだ。
工場の門の所で、ロバから駆け下りた少年が見たものは…
つづく…
…
…
…
やっぱり、つづける…
少年が見た工場は、外から見ると、夜いつもと同じ工場の建物風景であった。
しかし確かに焦げ臭い。それもかなり。
少年は恐る恐る奥へと歩いて行った。
奥に進むにつれ、焦げ臭さは増してきたと思ったら!!!!
オレンジ色の炎が、真っ暗な工場内から目に飛び込んできた! 暗闇でキャンプファイヤーの炎が燃え上がっているかの様に… 炎は天井まで届く勢いだった!
少年は馬鹿なのか勇敢なのか解らないが、水も持たず炎目掛けて向かっていった! 馬鹿なのかもしれない…
少年は、『大丈夫だ!大丈夫だ!』と叫びながら周りにあった革を炎に被せるように、何枚も何枚もかけて炎を消すことができた。水は一切使わなかった。
消し終わって、ホッとため息を付いたときに、燃えていた場所を見て、少年は我に返りゾッとしたそうだ。
燃えていた範囲はたたみ3畳分位だが、そのすぐ後ろ約2mの所の木造の壁の隣の部屋は、薬品が置いてある所だからである。
もし、発見が数分遅れたら、どうなっていたか…想像すると恐ろしい…
その後、物凄い数のサイレンが近づいて来て、消防士達がどっとなだれ込んで来た。
原因は、革を漉く時に刄を研いだ時に出る火ばなが、革クズにくすぶっていて、燃えたと解った。
それからは、こういうことは一切無かったという。
おわり
不良少年でも、大惨事を防ぐことが出来た、
『今だから言える昔話』でした。
俺と革 つづく