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【死】と向き合う。

友の訃報を聞いた。
TRPGではライバルであり、戦友であったと思う。
イベント企画やサークル運営の師の様であり、
個人的には、何でも話せる親友だった。
20年の付き合いがあったが、この5年程は諸事情から距離を置く事になってしまっていた。

10年前迄は理想を共有できる唯一の相手だった。
今目指している理想の先を、見て欲しい人だった。
沢山の人を紹介してもらい、沢山の【楽しい】を教えて貰った。
彼に面白さを教えて貰った『深淵』は、俺の魂のシステムになりつつある。
それ以外にも、様々な技法や概念を教えてくれたし、共に研鑽して生み出したノウハウも沢山有る。
貰った恩は、まだまだ返せていないと思う…

彼と最後に交わした言葉は事務的な物だった。
多くの人を巻き込んで、問題を起こした彼に、
事態の確認と今後の方針を聞く為に電話をした。
『迷惑をかけてすまない。ちゃんと処理するから大丈夫』
その言葉を最後に、彼は関わりある全てのコミュニティから抜けた。
逃げたという方が正しいのかもしれない。
俺は彼の起こした問題の処理で忙殺され、彼とじっくり話をする余裕がなくなっていたし、彼自身も引き返せない所迄行っていたと思う。

それでも後悔はある。
友人として、彼が行き詰まる前にやれる事は有っただろうが、
全ては結果論でしかないが……


TRPG関連の友人の【死】で思い出す相手が、他に2人いる。
今回亡くなったIさんを含め、三人とも元TRPGコンベンション主催者である。

某有名コンベンションの代表だったEさんは、いつも二十歳そこそこの俺に、『ようアミーゴ、楽しんでるかい?』と気さくに声を掛けてくれた。
遊び場を提供してくれて、人によって千差万別のゲームスタイルが有る事を教えてくれた。
多くのTRPGユーザーを紹介してもくれた。
MSに乗らない『ガンダム戦記』とかをよく立てていた。

サークルを持ち、コンベにあまり行かなくなり始めた頃、彼が交通事故で亡くなった事を知った。

Eさんからは、
・コンベンションでの立ち回り方。
・初対面のTRPGユーザーの見分け方。
・ヤバいユーザーの処理方法。
・主催の苦労。
等を学んだと思う。


Kさんに会った時、既に彼はコンベをたたんでいた。
各PCを隔離して個別処理するマスタリングは斬新だったが、
俺は当時からPC間の掛け合いによるセッションがTRPGの魅力だと考えていたので、かなりもめた記憶がある。
若かったというのも有るが…

10年ぶりに彼が俺のコンベに遊びに来た際、
長い入院生活で、以前の姿と別人の様に瘦せ細っていた。
共通の友人から、末期の癌だとは聞いてはいたが、
他の参加者の迷惑にもなるので、『体調が悪くなったら、帰ってもらいますよ』と伝えると。
彼は嬉しそうに『相変わらず病人にも容赦無いね。体調は大丈夫だよ』と、俺のGMする【深淵】に入って来た。
その日の彼のプレイは素晴らしかった。
自キャラの個性を出しつつ、周りのPLに気を使い、他のPCの発言も奇麗に拾って物語を紡いでいた。

帰りに、
K『身内贔屓せず、一人の参加者として遊ばせてくれて楽しかったよ。
  しかし、TRPGになると病人にも容赦無いね(笑)』
俺『他の参加者にKさんの事情は関係ないのでね。
  特別扱いされたかったんですか?』
K『いや、君が変わっていなくて安心した。
  こういうセッションがしたかったんだ。
  やっぱりコンベは良いね』
そう言って、笑顔で帰って行った。
その二ヶ月後に、自宅で亡くなった。

Kさんからは、
・感情を制して議論をする方法。
・PLが楽しめるなら、GMのスタイルに正否は無い事。
・常に全力でTRPGに取り組む事。
等を学んだと思う。


【死】という事実に向き合う時、思い出す言葉が2つ有る。

1つは、母方の祖父が家訓として、
『死んだ者にしてやれる事は何も無い、
 その人から貰った恩に恥じない生き方をすればいい』
と、言っていて、一族で一番可愛がられていた俺は臨終の床に呼んで貰えなかった。
祖父が意識を失う前に『忙しいんだから、死ぬ者の為に呼ぶな』と言ったらしい。

もう1つは、かつての武術の師の言葉。
『大事な者の死は、その人が最後に与えてくれた成長の機会だ。
相手との日々を思い出し、間違いと、成功と、喜びから生き方を学びなさい』と言うものだ。

何度となく実践し、役に立つ金言だとは思うが、
どうやっても後悔は残るし、その向き合い方で今も苦慮している。

Discordで故人を偲ぶ会をやったのだが、
自分の知らなかった彼の様々な事実や心情を聞き、
人生の複雑さと、人間関係の難しさを痛感した。
生きている俺がやって行ける事は、
彼との思い出を美化する事無く、教訓を受け止め、授かった知識を活かし、受けた恩に恥じない行き方を心掛けて行くしかないのだと思う。

TRPGに関しては、あの日に語り合った理想を必ず形にする為に、より一層の努力と工夫をして行く。
周りには、彼から紹介してもらった仲間が沢山いる。
感謝と共に前に進み、理想の【楽しい】を広めて行く事が、少しでも恩返しになればと思う。

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