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宗教2世、親の病気、いじめ、不登校。果たして自分は「恵まれていたのか」を振り返る。

宗教2世。特定の宗教を信仰する両親の元で育ち、両親及び宗教の教えに強く影響を受ける子供のこと。映画「星の子」でも話題になりましたね。

 

「あそこの家の親はおかしい」
「あの子と遊んじゃだめ」

 

そんな周囲からの言葉を、多感な子供時代に浴びせられ、子供にとっての絶対神である両親が「どこか世間一般的なものからズレている」ことを否が応でも自覚する。それでも彼らは両親を完全に拒絶することはできない。それが宗教2世の多くが直面する問題である。拒絶することができない理由は、ただ一つ。「親だから」。母親が無条件に子供を愛し守るのと同じように、彼らもまた親を無条件に頼り、リスペクトする。その複雑さが、多感な彼らを、がんじがらめにして離さない。

 

本業システムエンジニアの傍ら、空いた時間で、ジャンル問わず道行く人の話を聞く活動を始めている、なむさん(X@mrkatasyo)に、今日は話し手になってもらいました。

 

―宗教2世、ご両親が精神障害者手帳持ちであることを公開されています。子供時代の印象的なエピソードはありますか?

 

地元のお祭りのカラオケ大会がありました。母親が参加したんですが、フルマックスの大声を出して、全力で歌うんです。みんなに笑われるんです。あの人おかしいんじゃない?って。母親にとっては、イベントごとだから、全力で楽しまなきゃとか、周りを楽しませようとか、宗教の教えを拡大解釈した先にある義務感のようなものがあったんだと思います。そういうことが多々あって、自分の両親は「世間とズレているんだ」というのを自覚していきました。

公開できる範囲でお話してるので、パンチ弱いですかね(笑)あとは、これは宗教ではなく両親の精神障害からくる弊害だったのですけど、親戚の葬式で、突拍子もなく元気に振舞って、故人の家族に怒鳴られたりとか。事象と事象を上手く関連づけることができないんですよね。

 

―中学、高校はどんな学生でしたか?

 

そんな小学生時代だったので案の定いじめられて、中1の夏には不登校になりました。宿題だけ提出して進級させてもらってましたが、自分にも精神病の診断が下りました。それをきっかけに養護学校に通うことになりました。養護学校では優しい先生にも恵まれたおかげで、楽しくやっていたと思います。

 

―高校ではどんなことを勉強しようと思ったんですか?

 

実は、高専を受けたんです。

 

―高専の選択肢はいつ、どこで浮かんだんですか?

 

先生から勧められたかなぁ。なんとなく受けたら受かりました。学科は消去法で情報学科を選びました。

 

―それで今、システムエンジニアをされてるんですね。高校時代は楽しかったですか?

 

高専に行く子って、そもそも変わってる・尖ってる人らが多いので、浮かずに済んだのかな。男子校みたいな感じで。高専という選択肢が降ってきたのは、本当に「ミラクル」でした。あのとき高専を選んでなかったら、今「生きてない」んじゃないかな(笑)

 

―高専卒業後、システムエンジニアにご就職されるわけですが、仕事は順調でしたか?

 

最初からダメダメでした。お話した通り、消去法で進路を選んだので、エンジニアとしての技術的なモチベーションはゼロに近いんです。そこに人間関係のいざこざもあいまって、違和感を抱きつづけていました。今もですけど。

 

―それでも、今まで仕事を続けることができた理由は何かあったんですか?

 

家を守らなきゃ、と思いました。両親がこんな感じだし、先祖代々由緒ある家で、親戚に長男のお前がしっかりしなきゃダメだぞって言われていましたし。とにかく経済的に安定させるために、仕事をして、家にお金を入れようと、無意識に考えていたと思います。

でも、去年初めて転職サイトに登録しましたよ。自分のやりたいことって何だろうと悶々とする日々の中で「自己理解プログラム」という自己分析のサービスに出会いました。強みを診断するストレングスファインダーや、過去の経験から価値観を定めるモチベーショングラフを書いて、専属コーチと3か月間で「やりたいこと」を見つけます。

 

―どんなやりたいことが出てきたんですか?

 

このプログラムでは、「自分のやりたいこと」=「自分はどんな価値を他人に提供できるか」という視点で考えます。そして、その価値を提供した先に実現する世界のことを「ビジョン」として言語化します。
自分のビジョンは「多くの人が、出生や生い立ちを含む過去の自分を認めて受け入れ、明るい未来に進むことができる世界」です。そのための、一番大きな目標として「自分が、自分の名前で食べていけるようになること」を掲げています。
 

―インフルエンサーってこと?

プロ奢さんみたいなかんじで、自分の信念や生き様を発信して、共感してもらった先で、サービスを買ってもらうとか、応援してもらってお金をいただいてみたいです。今、道行く人の話を聞く活動をしていますが、「僕(なむ)だから、子供の頃のことをすんなり話せた」って言ってもらえることも、増えてきたものですから、そういう人を増やしていきたい。

ーなるほど。

でもね、それをやりたいって思う理由がさ、辛い幼少期のせいで自己肯定感みたいなものが育ちにくかったから、今になって、存在意義を証明するためだったり、自分のことを正当化したいだけなんじゃないかと悩んでいます。このもやもやをはっきりさせた先に、何かもっと他のやりたいことが見つかるのかもしれないっていうのは、模索している最中です。

―活動は順調ですか?

 
一回とあるオーディションに応募して不合格になったんです。そのときに、もっと泥臭くやんなきゃダメだと直感的に思いました。そして、自分の恥ずかしい過去を曝け出して、ようやく「存在意義を見つけたい」「過去の自分を正当化してあげたい」という感情が言葉になって出てきました。
「存在意義を見つけたい」「過去の自分を正当化してあげたい」という、素直な気持ちがベースにあった上で、楽しみながら活動できているんじゃないかなぁ。

 

―いいですね。最後にいじわるな質問をします。ご自身は「恵まれていた」と思いますか?

 

子供の頃、周りと違って変わっていたことを、「恵まれていた」と解釈するのであれば、「恵まれていた」んじゃないでしょうか?

 

―解釈次第ということですか?

 

いやーーーー(頭を抱える)便利な言葉で片付けたくないですよね。解釈ひとつで人生が上手く進むなら、誰も悩んでない。

 

―そうですね。そう解釈したくても、解釈できないから、みんな困ってる。じゃあ、幼少期を含む過去を引き摺っていた「鬱屈さ」からの“解除キー”となったのは何だったんですかね。

 

え、なんだろう・・・。

 

―そう解釈できる環境があるかどうかも大事じゃないかなと思います。頭に銃口突き付けられながらポジティブとか無理じゃないですか。だから、なむさんの場合、高専を卒業してライフラインが確保されているのも大きいんじゃないかと、聞いていて思ったんですが。そうなると「運」?だって高専に進学したのは「ミラクル」だったって言ってました。解除キーは、解釈?運?周りの助け?

 

そうだなー。「生きたい」ってことじゃない?死にたくなかったし。

 

―あ、いいですね。生きたいっていう本能が、幼少期を引き摺る自分をなぐさめ、つまらない日常を打破させ、泥臭くトライアンドエラーを重ねさせると。

 

そんな感じです。解釈でも、運でも、環境でもないです。僕の「生きたい」って本能が、過去の自分からの、解除キーになったんだと思います!過去の自分を洗いざらい認めて、一歩踏み出したいって人がいれば、ぜひお話を聞かせてください。

下記URLよりお申込みください。無料です。
https://timerex.net/s/mrkatasyo_3277/5b2387a9/
 

あとがき

今回「ありのまま」をテーマにしたインタビュー記事を書いてくれというお題をいただき作成しましたが、その第一弾が「死にたくないから、泥臭くやる。それは生きたいっていう本能だった」という言葉が聞けたのは、大変光栄なことであったと思います。

 

話し手のなむさん(X@mrkatasyo)と、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。


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