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キズナアイのいない時代を駆け抜けた挑戦者(アリルズ)達

 唐突ですが皆さんはアリルズプロジェクトというグループがある事をご存知でしょうか?
アニメ「絆のアリル」に出演していたタレントさん達が担当したアニメのキャラクターと同じアバターを纏って配信する、誤解を恐れずに言えば最近よく議論になっている顔出しするVTuber、つまり2.5次元VTuberのグループです。(正確に言えば本人達は自らをXRアーティストと呼称しています。)
 とかく否定的な意見も飛ぶこともある2.5次元VTuberですが(それ自体は否定しませんが)そんな中にも彼女達の事を少しでも知ってほしいと思い、今回noteで残す方法をとってみようと考えるに至りました。
 2.5次元VTuberってこういう考え方もあるんだよ、というちょっと考えを変えるきっかけになれば幸いです。

※ 予めぶっちゃけますが実はこれを書いてる本人は、

『キズナアイをいろいろ語ってる奴、アリルズに触れないのはただのモグリじゃね?』

みたいな厄介ファンな考えの持ち主です。お見苦しい点もあるかと思いますが、ご理解頂けると幸いです。
 


■ もう一つのなりたい自分へ
 

 アリルズプロジェクト(以下、アリルズ)は2022年12月に結成の発表、翌年2月からアニメの放送に併せて活動開始、そしてアニメの終了に併せて2024年の3月に定期的な更新を終了したコンテンツです。


 なんだ、ただのアニメのタイアップの企画じゃん。
なんて思う方もいるかもしれませんが、はっきりここで断っておきます。全然違います。
 アリルズには活動を通じて明確なコンセプトが存在しています。それが

 アバターを通じてもう一つの自分になること。

 アリルズのメンバーは15人全員絆のアリルに出演した演者さん達ですが、まずその出自が様々です。
 声優さんであったり歌い手さんだったりアーティストであったりクリエイターであったり・・・。
 それぞれのメンバーが異なる出自であり、そしてそれぞれがアニメで演じたキャラのアバターを纏いバーチャルの世界へ飛び込む(活動内ではこれを『ダイブ』と呼んでいます。)というコンセプトで活動しています。

公式Xより


 じゃあ結局アニメの設定と同じキャラ設定で活動してるんじゃないの?

 そんな事はありません。

 出演者全員アバターを持ってバーチャルの世界で自分達がどうありたいか?を明示し、それぞれがそれぞれのスタイルで活動しています。

 例えば小さい頃に夢だったアイドルのキャラクターのように振る舞いたい!だったり、作中完璧キャラだったようにもっとストイックに振る舞いたい!だったり、なんかセクシーパッションだったりクンカ姐さんだったり・・・
 要は『ダイブすれば』アニメの登場人物とは関係なくそれぞれがそれぞれの考えの元にアバターを纏って活動しています。
 なので、アリルズがダイブするとメンバー全員、中の人性格そのままでもなく、アニメのキャラクターでもない、本当にアニメとも中の人とも違うようなキャラクター、つまりれっきとした“VTuber”のような印象を受けています。

 上記の配信ではアリルズのコンセプトについてより明確に、よりわかりやすくアリルズメンバーが解説しています。


■ Dive into “i” ~キズナアイへのメッセージ~

 アリルズの代表曲として15人全員参加して歌う 「Dive into “ i ”」という2023年にリリースされた楽曲があります。

これがもうエモい!

 ・・・はっ!いきなりすぎて語彙力のない紹介の仕方になってしまいました。
 このDive into “i” 、アリルズの代表曲、メンバー全員曲ということで紹介しましたがその歌詞にはアリルズのコンセプトである、「アリルズのメンバーがバーチャルの世界に飛び込んでなりたい自分になる」というコンセプトそのものがその歌詞に綴られています。

心の壁も言葉の壁も飛び越えたら
Wake up! 心が行き着く先 呼んでる Dive into “i”

Dive into “ i ” より

 ここで言う“i”は勿論「私」という意味のアイですね。ダイブした彼女達の新しい可能性への希望、アニメで演じたキャラクター、そして活動を共にするアバターへの慈しみのような想い、即ち「もう一つの自分」への想いが歌詞に綴られています。(ちなみにバーチャルという意味も込めて虚数の“ i ”という意味もあるんだそうな)
 そして実はこの歌にはもう一つの意味が込められています。

それがキズナアイ、アイちゃんへのメッセージです。

でもね 君がくれたアイ 広がる世界に
まだ見えない けど大切なことだと

Dive into “ i ” より

 勿論ここで言うアイはキズナアイの“アイ”を匂わせているのは誰の目から見てもわかると思いますし、先ほどの「もう一つの自分(ダイブ後のキャラクター達)」の“ i ”の意味にも通じるというダブルミーニングな歌詞になっている所がこのDive into “ i ”の歌詞には所々存在します。
 もうこれだけでとんでもなくエモいんですが、これは個人の解釈になってしまうんですが、

アリルズの全員曲、Dive into “i” はキズナアイの楽曲、Sky Highのアンサーソングなのではないか?

ということです。

 このSky Highの歌詞の中には「遺伝子」というフレーズが存在します。

受け継がれた遺伝子が
雪のように降る
舞い散れ、ひらりひらり
星を埋めてゆけ
あの日に夢見た空の色を描いてゆけ

Sky High より

 YouTubeで活動しているアリルズ、そしてその元となるアニメ、絆のアリル。これらに共通するワード、アリルとはallele、対立遺伝子を意味しています。
「えっ!対立!?」となるかもしれませんが、俗に思い浮かべるような意味ではありません。)
 そしてこれまた個人の解釈になってしまいますが、このSky Highという楽曲は「AIでありバーチャルの存在でもあるキズナアイがさらに遠い未来に想いを馳せた歌」という解釈をしており、それがloveちゃん(現love=churmulet)だったり、#kznだったり、その他数多いるVTuberさんだったりと、Sky Highリリース当初からこれからへと続く未来のバーチャルで活動する人達に宛てた歌だと思っています。
 それらの中には勿論「遺伝子」の名を冠するアリルズも含まれており、そんな彼ら彼女達に対しSky Highではこのような歌詞があります。

さあ、スカイハイ
手を伸ばすその先を君と見たい
カラフルに彩った空は君だけの色

Sky Highより

 遠い未来の「遺伝子達」に手を伸ばしているアイちゃんですが、そんな未来にいるアリルズのDive into “i”には後半こんな歌詞が存在します。

心の距離も言葉の壁も 飛び越えたら
キズナとアイ ユメで繋ぐんだ 「側にいるよ、さぁ!」

Dive into “ i ”より

 遠い未来へ手を伸ばしていたアイちゃんにアリルズ達は未来から「側にいるよ、さぁ!」と声をかけているように見えます。
 そしてDive into “ i ”のラスサビではこのような歌詞で締めくくっています。

絶対今より強くなれるから 君のように
限界なんてない 1人きりじゃない一緒に Dive into “ i ”

Dive into “ i ”より

 未来にある種の希望を寄せていつつも「未来はあなた達のものだ」とどこかに一抹の寂しさ、孤独感を感じさせるキズナアイのSky Highですが、そんなアイちゃんがスリープしている未来にいるアリルズのDive into “ i ”ではアイちゃんに「側にいるよ」「1人きりじゃない」「一緒に」と語りかけているわけです。

ほら、もうエモくならんワケがない!!ああああっ!!

 如何でしたでしょうか?アリルズのDive into “ i ”はキズナアイのSky Highのアンサーソング説、なんかしっくりしませんか?

 キズナアイ原作のアニメ、絆のアリルの脚本を務めた赤尾でこさんへのインタビューではこのように語られています。2019年の春と言えばSky Highがリリースされたのが2019年6月30日。時期が重なっています。

スタートから話しますと、企画自体は2018年頃には始まっていました。そして、2019年の春頃からアイディアがまとまり始め詳細な企画を作り始めたと思います。

https://kizunanoallele.com/news/1084/ より


 当時いろんなモヤモヤで物議をかもしたかもしれないSky Highですが、
実はアイちゃんの過去のライブではSky Highは必ずと言っていいほどセトリに組み込まれている程大切に扱われている楽曲です。
(当時はずっとその意味、意義を考えていた日々だったなぁとしみじみ・・・)
 
そして2022年のキズナアイ活動休止前ラストライブ、「hello,world2022」で晴れて昇華されたSky Highですが、そんなSky Highが2023年リリースのアリルズのDive into “ i ”にそんな意味が込められていたんだとすると、結果4年越しのアンサーソングになるということでDive into “ i ”を聴くたびに万感の思いがこみ上げてしまいます。

あああああああああああっっっ!!!!


■ 人が想像できることは、人が必ず実現できる。


 これまたなんてエモい台詞なんでしょうか。これ一体なんの台詞なんでしょう。
 はい、これは2024年3月8日アリルズプロジェクト1stワンマンライブ、「THE ViRTUAL」のキャッチフレーズです。
 大層なキャッチフレーズだったり、「VIRTUAL」というどストレートなタイトルだったりととにかく「そんな事言ってて大丈夫?」なライブですがはっきり言います。

全く名前負けしてません。アイちゃんファンとしてはっきり言います。技術面だけで言うなら比較にならないレベルでhello,world2022のクオリティを軽く超えてます。

そしてそんなアリルズのライブは
YouTubeにて全編無料で現在でも視聴が可能です。

 クオリティについては当時のprtimesに書いてあるので紹介してみると、

① アリルズメンバー15人同時出演によるオンステージ

② リアルとバーチャルの共演

③ 東京ドーム一個分のバーチャルステージ

が挙げられています。

この中に実はとんでもないフェイクが仕込まれていてそれは見てのお楽しみなんですが、
 
配信内のライブではその技術が遺憾なく発揮されているライブだったと思っています。(ちなみにKizunaAi incがライブ関連で大袈裟な事言った時は期待していいという個人的ジンクスがあったりしますw)
 ただ、個人的にはこう言った所謂「技術売り」で一括りにして片付けてはいけないと思う程、アリルズメンバーは勿論の事、スタッフや制作陣の“熱量”“想い”がこのライブには込められていて、それがクオリティに昇華されこのライブの素晴らしさに繋がっていると感じています。
 あまり詳しく語ると面白味に欠けるので色々ボカして話をすると、

ライブで披露されたセトリの一曲一曲(勿論セトリの構成もほぼ完璧)に専用のエフェクトや演出、そしてMC中の台詞回しやライブ中のカメラワークに至るまでありとあらゆる所で小ネタが仕込まれていて、それが全部アニメやアリルズの活動内容由来のファンサービスに溢れたものである。

と言ったところでしょうか?

サラとゾーイのライブ中のワンカットですが、これもアニメだけでなくアリルズの配信内でもエピソードがあるというとんでもなくエモいカットなんですよね。こんな感じの演出、カット割ででライブがずっと進行します。


 正直これらの小ネタはこのライブを何回も見返している今でも全部把握できている気がしない程のファン視点から見ても解像度が高すぎるライブだったという感想です。
 他に例を挙げると、先程先述した内容のうちパッと聞き一番意味がよくわからない

② バーチャルとリアルの共演

も、ライブ開演一時間前の演出として

当時オーディションに受かった直後のアリルズのメンバー全員にインタビュー(しかも合格を伏せてインタビュー会場に来させるというドッキリつき)を「あの時の私たち」と題して初披露する

と言う、まるで「卒業生を送る会」の前振り、結婚式の友人達で作るサプライズビデオみたいなニクいことやってのけています。

 そしてさらにその際アリルズのメンバー全員にサプライズとしてアイちゃんがビデオメッセージを送っていた事も初めて明かされ、アリルズのダイブ前の彼女達もダイブ後の彼女達も一年を通じて見てきた視聴者の人達みんなこのアリルズに対してアットホームな親近感を抱きながらも、否が応でもライブに向けて気持ちが高ぶっていたと思います。(勿論ライブ中のリアルとバーチャルの共演はそれだけで留まるはずもありませんのでそれも見てのお楽しみ!)

 こういった一つ一つのメンバーや制作陣のこだわりである“熱量”や“想い”が先述した①~③と高いレベルで交わる事で正にトンデモクオリティのライブに繋がった、と感じたライブでした。

「中の人が出て来る事が正解になるアリルズのライブ、すごすぎるでしょ」

当時こんな感想を見かけたのがすごく印象的だったアリルズの1stワンマンライブ、是非皆さんも一度見てみませんか?


■ 引退という概念が存在しないVTuber


 ちょっとセンシティブな話題になります。冒頭でお話した通り、アリルズは2024年の3月を以て定期的なコンテンツの提供を終了(原文ママ)しています。VTuberで言うところの卒業や引退と同義なのかもしれません。
 ただこう言うと何ですが、アリルズの物語は今も続いています。
 
アリルズには一貫してダイブ前、ダイブ後という概念が存在し、言わば中の人を最初から顔出しするというスタイルをとっていた事により、何も隠すことなく今でもアリルズのメンバー達は交流やアリルズでの活動の振り返りやキャラクターへの想いをXやタレント本人のYouTubeのチャンネルで公言しています。


さらになんとアリルズメンバーは実はアイちゃんのボイスモデルである春日さんとの交流があることも明かされています。

 一年を通じてアリルズの活動を見てきた人間としてなんて幸せなことなんだろう思うのと同時に、ダイブ前、ダイブ後という二次元も三次元も肯定したスタイルをとったアリルズだからこそコンテンツの提供が終了した今でもこうやってアリルズ成分が享受できている事、そしてそれらを実際の言葉にしてくれるアリルズメンバーには感謝しかありません。
 さらにもう一つ、中の人を公言していたことによるメリットがあります。
 今のアリルズは「定期的なコンテンツの提供を終了している」ということなだけで、

KAincがオファーすればまたいつか会える可能性が十分にある

と言う点です。

 現に何人かのアリルズのメンバーは2024年以降もらぶちゃの配信に参加したり、ビデオメッセージを送っていたり等、不定期ではあるもののアリルズメンバーとして参加しています。
 


 アイちゃんの誕生日という節目にもアリルズのメンバー達はお祝いしてくれています。

 どうでしょうか?
 アリルズにはダイブ後の活動がなくってもダイブ前の活動があるって考え方、とてもステキだと思いませんか?
 アリルズのメンバーが表舞台で活動している限り、そしてもしかしたら生きている限り(実はタレント活動休止中のアリルズメンバーが交流のために顔を出してたりもします。)、アリルズの活動はずっと続いていくんです。

 
2024年3月最終日のアリルズ公式からのスタッフの挨拶を引用します。

 もしかしたらまたいつか彼女達はアバターを纏い、中の人でもない、アニメのキャラ設定まんまでもない、ダイブ後の彼女達にしかできない笑いを、驚きを、感動を伝えてくれることに希望を抱かせてくれるような本当にステキな内容だと思います。

 改めてここまで読んでくれた方に問いたいです。アリルズは世に言われるような2.5次元VTuberだったんでしょうか?VTuberが絶対的に顔を隠さなければいけない必要って本当にあったんでしょうか?


■ キズナアイのいない時代を駆け抜けた挑戦者達

 ここで表題に戻ります。アリルズはキズナアイがいない時代に活動していた(あえてこう表現しますが)中身を公表し、中身の顔もだすVTuber、いわば2.5次元VTuberです。
 自分はそんなアリルズの事をメンバーは勿論、関わってきたスタッフ達全員含めて挑戦者だと思っています。
 例えば先程のワンマンライブだけでなく、2023年末に行ったアリルズのユニットライブではVICONICのセアを演じる月乃さん名義の楽曲をメンバーで歌う、というサプライズが披露されました。

 字面だけだと「ふーん」程度に見える感じもするかもしれませんが、冷静に考えてみてください。

「ニアVTuberというシチュエーションで中の人名義の歌を披露する」

をサプライズで披露されるとどれだけびっくりするかを。
 そんな飛び道具みたいでもあり、でも二次元も三次元もフラットに同じように扱い、それを肯定するアリルズならではの演出は当時大盛り上がりしていた記憶があります。月乃さんファンの人達、絶対誰か泣いてる人いただろうなとw
 先述したワンマンライブだけでなく、こういったスタイルは常日頃からスタッフのアリルズへの思い入れがあるからこそ為せる技だと思っています。

 そしてそんなアリルズのメンバーも自分達が演じるキャラクターのために、もう一つの自分になるためにひたむきに、そして真摯に活動していた場面を何度も見てきました。

この動画を配信内で何回見せられたことか・・・。
アリルズスタッフめ、情に訴えてくることしやがってw
 彼女達を通じて自分は少なくとも

VTuberは顔や体を隠す事が大事なのではく、アバターに対してどう向き合うか、中の人がアバターの事を如何に大切に向き合ってくれるか、逆に顔や体を隠すのはその一環でしかない。

 と、思うようになりました。
 今回、さっきちらっと話をしましたが、絆のアリルのアリルとは「対立遺伝子」の事です。
 ただ、ここで言われる対立とは「対(つい)」という意味合いです。
 仮にアイちゃんの物語が

「AIが世界中の人間のみんなと繋がっていくための物語」

とするならアリルズの物語は

「スタッフも含めた人間達がキズナアイの世界へどう飛び込んでいくかを追い続けていく物語」

だと思っています。ほら、ベクトルが向き合っていて「対」になると思いませんか?
 そう思えばこれほどまでにキズナアイに、バーチャルに、そしてアバターに向き合っている人達がいる事を自分は忘れることはないと思います。(あえて現在進行形w)
 同時期に同じように中の人を公表するという活動形態をとっていた「エンギモノガタリ」というグループも存在していますが、これもまたアリルズとは全く違う味付けがされていて、バーチャルへの、そしてアバターへのアプローチの考え方の違いを楽しんでいましたが、さすがに長くなるのでこの辺にしようと思います。
 昨今実写表現の是非や2.5次元VTuberの是非、転生問題やらが話題になったり目にする事が多いですが、そのアンサーの一つの存在になりうる事に希望を寄せ、このnoteを終わりにしたいと思います。

それでは皆さん!
しーゆー!またねー!


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