それぞれのかたち
「今日は、何して遊ぶ?」
「外あちぃからなー」
「コンビニでアイスでも買おーよ」
天気予報では、今年一番の暑さだと言っていた。そんな中でもいつも一緒にいる仲良し3人組、橋本拓人(はしもとたくと)と須崎愛(すざきあい)と平岩俊雄(ひらいわとしお)。
きっとこの先もずっと仲の良さは変わらないのだろう。
「今日、まぢで部活なくて良かったよ」
「ほんとほんと!この暑さじゃトロけるわ」
夏休み中は、比較的部活動の日数も多く、陸上部に所属している3人は、もうやけるところがないだろってくらいの勢いで日焼けしている。
「俺ら、将来何になるんだろーな」
これは、いつもの拓人の口癖だった。
愛も俊雄も、あまり将来について考えたこともなく興味もない。が、いつものことなので適当に返事する。
「俺は社長になりたいな」
「私は幸せなお嫁さん」
「お前ら…いつも適当に言うなよ!」
こんなくだらない話で、いつも時間は過ぎていった。
「なんでまた俺ら一緒なんだよ」
どんな縁なのか、高校も同じになった。
小学生の時から常に一緒にいるが、なんら関係性に変化はなく・・・高校生になると恋愛の話が多くなってきていることは、何か成長しているのかなと感じる部分でもあった。
「拓人、今日は彼女と遊ばねーの?」
「てか別れたし・・・」
「まじ?あの子と長かったでしょ?」
愛は、恋愛の話になると、とても楽しそうになる。
「なんでなんで?なんかあったのー」
「別にいいじゃんかよ」
いつも通りの昼休みを過ごす3人組。
ちなみに、仲良し3人組の中に、一切恋愛の関係性はないことを伝えておこう。それぞれ、普通よりはいい顔立ちを有しているが…これが幼なじみってものなのだと思う。
「俺ら、結婚とかするのかな?」
「誰が一番早いと思う?」
「私、幸せなお嫁さんが将来の目標だから!」
「それ、小学生の頃も言ってたよな」
「よく覚えてたねー」
こんな話が出来るのも、幼なじみの良いところなのかな。
とある総合病院の待合室。
あれだけ仲の良かった3人組も、高校卒業後、音信不通となっていた。お互いの事は気になりつつも、何か連絡もせず、時間が過ぎていった感じだ。
「もしかして・・・拓人・・・?」
「え!?愛??」
「すげー久しぶりじゃん!元気か?・・・ん?」
改めて愛を見た拓人。愛が妊娠をしているのに気が付いた。
「愛、結婚したんだー。おめでとう!」
ちょっとドヤ顔の愛。きっと小学生の時の目標、幸せなお嫁さんになったのだろう。ただ、何だか恥ずかしそうにも見えた。
「そんな拓人はどうなの?」
「俺も結婚したよ!まー、嫁にもらわず、相手の方にね!」
「拓人、お兄ちゃんいたからいいじゃん」
こんな話も、大人になったからこそ出来る話だと思う。
「ねーねー!知ってた?この病院、俊雄が医院長してるんだよ」
俊雄は、総合病院を経営しているとこの一人娘さんと結婚したようだ。一人娘なので、拓人同様、婿養子に入ったのだ。病院を継ぐために、必死で勉強に励み、医者になったところは、さすがだと思う。
「みんな幸せになってるんだな」
「またみんなで集まって、思い出話でもしようよ」
そんな時、定期検診で呼ばれるのを待つ愛に、診察室から声がかかる。
同時に、拓人も会計の窓口から名前が呼ばれる。
そして、拓人はふと考えた。
「阿井 愛(あい あい)さーん」
「今 拓人(こん たくと)さーん」
「・・・佐藤総合病院・・・佐藤 俊雄(さとう としお)」
何かに気が付きましたか?
3人のそれぞれのかたち!
日常が非日常になる。
色々な事が起こる世の中。
その場その場で対応していくことが求められる。臨機応変ってやつ。
そんな対応力が必要になってきますね。
クスッとして頂けたら幸いです。