それぞれのかたち


#2000字のドラマ

 「今日は、何して遊ぶ?」
 「外あちぃからなー」
 「コンビニでアイスでも買おーよ」

 天気予報では、今年一番の暑さだと言っていた。そんな中でもいつも一緒にいる仲良し3人組、橋本拓人(はしもとたくと)と須崎愛(すざきあい)と平岩俊雄(ひらいわとしお)。

 きっとこの先もずっと仲の良さは変わらないのだろう。

 「今日、まぢで部活なくて良かったよ」
 「ほんとほんと!この暑さじゃトロけるわ」
 
 夏休み中は、比較的部活動の日数も多く、陸上部に所属している3人は、もうやけるところがないだろってくらいの勢いで日焼けしている。

 「俺ら、将来何になるんだろーな」
 
 これは、いつもの拓人の口癖だった。

 愛も俊雄も、あまり将来について考えたこともなく興味もない。が、いつものことなので適当に返事する。

 「俺は社長になりたいな」

 「私は幸せなお嫁さん」

 「お前ら…いつも適当に言うなよ!」

 こんなくだらない話で、いつも時間は過ぎていった。

 「なんでまた俺ら一緒なんだよ」

 どんな縁なのか、高校も同じになった。

 小学生の時から常に一緒にいるが、なんら関係性に変化はなく・・・高校生になると恋愛の話が多くなってきていることは、何か成長しているのかなと感じる部分でもあった。

 「拓人、今日は彼女と遊ばねーの?」
 
 「てか別れたし・・・」

 「まじ?あの子と長かったでしょ?」
 愛は、恋愛の話になると、とても楽しそうになる。
 「なんでなんで?なんかあったのー」

 「別にいいじゃんかよ」

 いつも通りの昼休みを過ごす3人組。

 ちなみに、仲良し3人組の中に、一切恋愛の関係性はないことを伝えておこう。それぞれ、普通よりはいい顔立ちを有しているが…これが幼なじみってものなのだと思う。

 「俺ら、結婚とかするのかな?」

 「誰が一番早いと思う?」

 「私、幸せなお嫁さんが将来の目標だから!」

 「それ、小学生の頃も言ってたよな」

 「よく覚えてたねー」

 こんな話が出来るのも、幼なじみの良いところなのかな。

 とある総合病院の待合室。

 あれだけ仲の良かった3人組も、高校卒業後、音信不通となっていた。お互いの事は気になりつつも、何か連絡もせず、時間が過ぎていった感じだ。

 「もしかして・・・拓人・・・?」

 「え!?愛??」

 「すげー久しぶりじゃん!元気か?・・・ん?」

 改めて愛を見た拓人。愛が妊娠をしているのに気が付いた。

 「愛、結婚したんだー。おめでとう!」

 ちょっとドヤ顔の愛。きっと小学生の時の目標、幸せなお嫁さんになったのだろう。ただ、何だか恥ずかしそうにも見えた。

 「そんな拓人はどうなの?」

 「俺も結婚したよ!まー、嫁にもらわず、相手の方にね!」

 「拓人、お兄ちゃんいたからいいじゃん」

 こんな話も、大人になったからこそ出来る話だと思う。

 「ねーねー!知ってた?この病院、俊雄が医院長してるんだよ」

 俊雄は、総合病院を経営しているとこの一人娘さんと結婚したようだ。一人娘なので、拓人同様、婿養子に入ったのだ。病院を継ぐために、必死で勉強に励み、医者になったところは、さすがだと思う。

 「みんな幸せになってるんだな」

 「またみんなで集まって、思い出話でもしようよ」

 そんな時、定期検診で呼ばれるのを待つ愛に、診察室から声がかかる。
 同時に、拓人も会計の窓口から名前が呼ばれる。
 そして、拓人はふと考えた。

 

 「阿井 愛(あい あい)さーん」

 「今 拓人(こん たくと)さーん」

 「・・・佐藤総合病院・・・佐藤 俊雄(さとう としお)」

 何かに気が付きましたか?
 3人のそれぞれのかたち!

 日常が非日常になる。
 色々な事が起こる世の中。
 その場その場で対応していくことが求められる。臨機応変ってやつ。
 そんな対応力が必要になってきますね。

 クスッとして頂けたら幸いです。

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