〜てください・〜ましょうか
先日、日本語初級における最初の関門「〜てください・〜ましょうか」の授業をしました。やってみた感想としては、成功度30・失敗度70でした、、、、
やってよかったところ・失敗したところも【ポイント】に入れ込みながらまとめていきたいと思います。
〜てください
【形】Vテ+ください
【意味】話し手→受け手に何らかの行為を要求する<依頼>。
*初級の授業では説明が難しいので触れないが、関係性によっては<命令>になる場合もある。
【例文】
・暑いです。窓を開けてください。
・重いです。少し持ってください/手伝ってください。
・ここに住所を書いてください。
・すみません、消しゴムを貸してください。
【ポイント】
まず、て形の練習に入る前にこれまで習った動詞の確認をします。『みんなの日本語』で「14課 〜てください」までに出てきた動詞をまとめてみました。
たくさんありますが、中には「タバコを吸ってください」「疲れてください」など「〜てください」で言うことがほぼないものもあるのでそれらを除いて、よく使うものを中心に動詞の練習・例文の提示を行います。(個人的に太字の動詞は扱いやすくイラストも探しやすいと思います。参考までに)
機械的な練習だけだとつまらなくなって学習者が飽きてしまいます。楽しませるゲーム・活動をいくつか挙げておきます。
①[導入のとき]学習者に「〜てください」でお願いしまくる
T:Aさん、あついです。エアコンをつけてください。お願いします!
あ、窓が!Bさん、閉めてください。お願いします!
T:Cさん、立ってください。あ、ここに来てください。
(ホワイトボートの高い部分をさして)これ消してください。お願いします!
T:Dさん、立ってください。ここに来てください。今日は何月何日ですか?
書いて下さい。お願いします!
T:Eさん、(日付を差して)今日は何月何日ですか?読んでください。お願いします!
②[基本練習後]て形カードゲーム
フラッシュカードを裏返して机の上に並べ、一人ずつめくって「ます形」→「て形」で答えるというゲーム。*制限時間5秒
③「イラスト練習」無茶振り質問
例文で示したような典型的な状況だけではなく学習者が「え、嫌です笑」と言うようなお願いも入れてみる。
他にも、
T : 新しい車が欲しいな、、、、Sさん、新しい車買ってください!
S : いやです笑
こうしたやりとりをするとクラスの空気が和みます。
また、ここで笑っている学生は言われていることがわかっているので大丈夫ですが、反対によくわからず「はい」「いいです」といった学生は意味がわかっていない可能性があるので要注意です。
その意味でもこの無茶振り質問は結構いいのではないかな、と思っています。
もう少し
今回「〜てください」の意味理解と変換練習に時間を割きすぎて、学生が「〜てください」を使う活動をちゃんと扱えませんでした。
・先生、この漢字がわかりません。読んでください。
・この問題練習したいです。コピーしてください。
・この問題が難しいです。教えてください。
留学生にとっても「〜てください」はとても便利な言葉なので使う練習を次回はもっとさせてあげたいと思います。
〜ましょうか
【形】Vマス+ましょうか
【意味】誰かが困っているなどの状況で、自ら何らかの行為を申し出るときに使う。
【例文】
・(暑そうな様子) 窓を開けましょうか。
・(重そうな様子) 持ちましょうか。/手伝いましょうか。
・(消しゴムがなくて困っている様子) 消しゴムを貸しましょうか。
【ポイント】
「〜てください」とは対になる表現なので例文もイラストもそのまま使えそうです。ただ、私はここで大失敗しました。
T : Aさん、なんと言いますか?
S : 消しゴムを貸してください。
T : ??、、、、S2 さん、なんと言いますか?
S: 消しゴムを借りましょうか。
T:???、、、みなさん、誰が消しゴムを貸しますか?
半分の学生:Aさん! もう半分の学生:Bさん!
ここにきてクラスに大混乱が起きました。なんでこんなことになったのか分析してみました。
学生にとって難しいポイントその①
「借りる/貸す」「あげる/もらう」などの授受表現がそもそも難しい。
<Aさんが消しゴムを貸す>
<Bさんが消しゴムを借りる>→消しゴムをBさんがAさんに返す
という動詞の名前・ものの移動を定着させておく必要があるのですがこれがそもそも学習者にとってかなり負荷が大きいのです。
学生にとって難しいポイントその②
「〜ましょうか」は自分の行為、「〜てください」が相手の行為にかかっている。
この場合、「貸してください」はBさんの発話であるにも関わらず、「貸す」はAさん(相手)の行為の要求になっています。こうやって言葉にしてみると、日本語母語話者でもなんだか混乱してきそうですよね。学習者ならなおのこと、、、、
そのため、「〜ましょうか」を導入した時点で学習者からすると
「なんで話し手がAさんとBさんで違うのに動詞は両方とも「貸す」なの?」
「結局、誰が貸すの?誰が借りるの?」
「〜てください・〜ましょうかの違いって何?」
となっていたみたいです。
まとめ
〜てください:話し手→相手の行為を要求する表現。
よく使う表現を調べて、学習者が聞いてわかる・使えるような練習と活動を用意する。「〜ましょうか」との混同を避けるために「誰が言うのか」「誰の行為か」を押さえて導入する。
〜ましょうか:自分の行為を申し出る表現。
「〜てください」との混同を避けるために「誰が言うのか」「誰の行為か」を押さえて導入する。
自分の国ではない日本に来て周りを頼ること・周りと協力することは留学生にとって必須のスキルになります。「〜てください」「〜ましょうか」を上手に使えるようになるところまで、もうちょっと頑張ってサポートしていきたいと思います🌱
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。