あと何年共に生きられるのか #未来のためにできること
可能性に満ち満ちていた若い頃
未来はとてつもなく遠くにある気がしていた
「今」という瞬間を生きることに精一杯で
いつの間にか、未来の為の準備ばかりして
「今」を大切に生きることを忘れていた
現状に満足することができなくて
生産性にばかり目が行き
現状を変えようと必死にもがけばもがく程
中途半端な今の自分に満足が出来なくなる
自分を認める事ができず
絶対にやってはこない、到達する事のない
100%満足できる未来の自分の為に
今を犠牲にし過ぎた
癌を告知された瞬間に
ずっと先だと思っていた死が
終わるはずのない、時間の終わりが
突然目の前にやってきた
今を犠牲にしてでも、待ち望んでいた未来が
永遠にやってこない事を理解させられた
ほとんどの事は
注ぎ込む時間と努力があれば実現できたし
行き詰まる事があっても
ある程度の行動力と判断力で
選択肢を見つけ出し、選び取る事ができた
でも、ここへきて、初めて
抗うことの出来ない
選択肢の無い
自分の力ではどうにもならない
何か強大な力で押さえつけられてしまった
その瞬間に、時の残酷さに気付かされる
会社の同僚の子供が、
入社した時は幼稚園に通っていたのに、
気づけばもう高校生になっている
乳飲児だった我が子は
もうおしゃべりを始めて
ヨチヨチ歩きをしていた面影は消え去ってしまった
目の前の我が子の、たった1年、2年前の姿を
目を瞑っても思い出せない
写真の中でしか、もうその姿はない
子供の成長ほど、
時の残酷さを知らしめるものはない
時は止まることなく進み続け
その過ぎ去る速さに気付かされる
私は大切な時を、瞬間を
イタズラに未来の投資の為と理由をつけて
浪費していた事に気がつく
目の前にいる
我が子の笑顔、幼い仕草
泣き顔、可笑しな言葉遣い
わがままを言ったり
他人をいたわったり
他人を傷つけたり
寂しがったり、喜んだり、怒ったり
それら全てが
一瞬にして時の流れの中に過ぎ去ってしまう
見逃してはいけない
その瞬間を目に焼き付けて
記憶に留めておきたい
我が子の涙の味も
我が子の石鹸のような汗の匂いも
今この瞬間を味わいたい
微笑みたい
眺めたい
噛み締めたい
瞬間の中に身を置きたい
今を生きたい
片手間に流さず
凝視して、今に没入して
瞬間を味わいたい
それが、未来の為できる事
100%満足のいく未来は永遠に来ないが
死する瞬間、その未来は必ずやってくる
その未来の為に
今を精一杯楽しんで
やりたい事をやって
会いたい人に会って
食べたいものを食べて
見たいものを見て
聞きたいものを聞いて
心のおもむくままに
自分の人生を、限られた時間を
噛み締めて生きたと言う実感を
無駄に過ごさなかったと思える
少しでも後悔のない今を
愛しい経験を
今、この瞬間を積み重ねる
明日の仕事の事を考えて
早く寝ようとするのではなく
愛おしい我が子の寝顔を眺めて
今しかないのだから