〜なぜいま「建物調査」が 注目されているのか?〜(2011/07/21掲載)
※本コラムは、2011/7/21に株式会社ジャストのコーポレートサイトへ投稿されたコラムの再掲となります。
「建物調査」とは、その名のとおり、建物の耐震性や劣化度合い、瑕疵(欠陥)の有無などについて調査するサービスを指します。明確な定義はありませんが、一般的には既存建築物を対象とした調査を「建物調査」と呼ぶ場合が多いようです。
建物調査は、ひと昔前まで一般の方にはほとんど馴染みのないサービスでしたが、近年にわかに注目を集め、私たちジャストも数多くの調査依頼をいただくようになりました。その背景に、耐震強度偽装事件などによる建築物の安全性への不安や、大規模地震への懸念などがあるのは言うまでもありません。
しかし私たちジャストでは、いま建物調査が注目されているより大きな要因は、「ストック型社会への転換」にあると考えています。
ヨーロッパの街を歩くと、建築から100年以上──場合によっては数百年近くも経過した建物が、改修されたり、用途を変えたりしながら、今も大切に使われている風景をしばしば目にします。一方、日本ではこれまで長年にわたって、建築物を築30年程度で壊しては建て替える「スクラップアンドビルド」を繰り返してきました。
しかし最近はこうしたあり方を見直す気運が高まり、いわゆる「100年住宅」をはじめ、長寿命化を謳った建築物が相次いで登場しています。またマンションのリノベーションや、町家・長屋暮らしが静かなブームになったり、レトロビルが人気を集めたりしているのも、こうした気運の表れと言えるでしょう。
さらに2006年に施行された住生活基本法も、「良質な住宅ストックの形成」を基本理念とし、具体的施策として、耐震改築の促進、エネルギー使用の合理化、住宅管理知識の普及、良好な景観形成、性能表示制度の普及、中古住宅流通の円滑化などを挙げています。戦後一貫して「量の充足」を柱に据えてきた日本の住宅政策も、遅まきながら「質の充実」へと舵を切ったわけです。
このように、日本もようやく「ストック重視」の方向に向かい始めましたが、既存建物をできるだけ長期に使おうと思えば、当然ながら、適切な修繕・改修を行わなければなりません。そして適切な修繕・改修を行うためには、まず建物の状態を正確に把握することが大前提。つまり建物調査が不可欠となるのです。
地球温暖化をはじめとする環境問題が深刻化するなか、限りある資源を有効に活用するためにも、ストック型社会への移行は不可欠です。そんな時代だからこそ、建物調査の重要性が認められ始めているのではないか──それが私たちジャストの認識であり、期待でもあります。
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