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人間万事塞翁が馬

ある老人の話。
老人が飼っていた馬が逃げて行ってしまった。〖悲〗
馬を失い悲しんでいたが、しばらくして逃げた馬が他の馬を沢山引き連れて帰ってきた。〖嬉〗
馬が増えて喜んでいたが、連れてきた馬に乗っていた息子が落馬し、骨折してしまった。〖不運〗
息子が骨折して悲しんでいたが、戦争で国から招集がかかった時に怪我をしていたため免除され、戦死した若者達の中に息子は含まれずに済んだ。〖幸運〗

という中国の古い書物「淮南子(えなんじ)」に書かれているお話、それが「人間万事塞翁が馬」。
意味は「人生の中には嬉しいことや幸運もあれば、悲しいことや不運もある。しかし、何が幸福で何が不幸かは直ぐに決まるものではない」ということ。

日本でもことわざの様に使用されている言葉だが、私はこの話が好きで人生の心得として思い出すようにしている。

今の自分が辛い状況にあったとしても悲しまずに、幸福に転じるかもしれないと信じ、頑張る。
逆に、今の自分に楽しい事が続いていたとしても浮かれずに、不幸に転じるかもしれないと気構え、頑張る。
そうやって生きていきたいと思う。

ここからは「人間万事塞翁が馬」に準えて、私の趣味(人生経験)の話を少し。

「大学行かずにバンドの道を進もうぜ!」バンド仲間達から熱く語られた。しかし当然身内周りからは猛反対され、音楽の道をやむを得ず断念したのは高校2年生の冬くらいだったか。〖悲〗
大学に入学し、サークルならと思い人気で部員数の多い軽音楽部に所属した。おかげで高校時代のように偏った音楽だけでなく、様々な音楽に巡り合えた。〖嬉〗
一方、反対を押し切って音楽を続けた地元の音楽仲間は上京してどんどん有名になっていった。私は嬉しい半面、少し嫉妬や後悔を感じていた。〖嬉・悲両方〗
そんな折、軽音楽部のメンバーとの繋がりで尊敬できるバンドの(テレビ出演等もしていた)人達と出会​った​。音楽技術はもちろん人間関係もすごく、有名バンドのライブをゲスト観覧させてもらったり、ライブ後の会食に同席させてもらったりと、もうこの人達の指導を受けようと軽音楽部も辞め、付いて行くことを心に決めた。〖幸運〗
しかし、私の期待とは裏腹にこのバンドの人達の考え方や生活指導は非常に厳しく、辛すぎて私の心はどんどん病んでいった。その頃は音楽の事を考える余裕もなく、むしろ音楽が嫌いになっていったのを覚えている。〖不運〗
これをきっかけに、私は音楽とは離れることとなってしまった。〖不幸〗

これだけ聞くと、バンドマンになるのが夢だったのかと思われるかもしれないが、全くそんな事はなく、しっかりと建築関係の仕事を目指していた。
ここからは少し仕事(人生経験)の話。

大学では建築学科を専攻し、建築現場で働くことを夢見て勉強していた。大学4回生の就職活動では、第一志望で面接を受けていた会社(地元 兵庫県姫路市のゼネコン)の得意先に偶々知合いがいたため、有難いことに早々(5月くらい)には内定を頂いていた。〖幸運〗
卒業論文や卒業旅行も終えていよいよ社会人かと身構えていた2月頃、内定を頂いていた会社から「倒産することになりました。」とまさかの連絡があった。〖不運〗
2月から就職活動しても遅いだろうと諦めていたが、設備系の現場監督の会社が応募しており、面接に行くと4月から来て欲しいとのことで内定を頂いた。目指していた建築系ではないものの、建築現場で働けることに期待を膨らませこの会社に就職することを決めた。〖嬉〗
しかし、設備系の現場監督の仕事ではピーク時は朝7時から終電ギリギリまで現場に拘束され、常時心身ともに疲れ切った状態となっていた。〖悲〗
そんな仕事尽くしの生活を(すぐにでも転職したいと思いながら)結局6年間も続けていたが、ある日転職サイトで情報収集している際、とある会社から勧誘メールが入ってきた。設備系現場監督の勧誘に紛れて、偶々設備経験者を募集していた建物検査・調査系会社からの勧誘であった。そう、これが株式会社ジャストからの勧誘であり、面白そうと感じた私はすぐに返信し、面接後に採用して頂いた〖幸運〗

ジャストに入社して10年弱くらい経つが、特に大きなストレスもなく全国の建築現場をいろいろな角度から経験できるため、ほぼ夢が叶ったような状態である。また、設備系の経験も活かせるように仕事を誘導して頂き(むしろ、監督時代より設備の勉強をしている)、ハードな6年間も無駄ではなかったと報われた。さらに、会社の部活動では音楽部に所属しており、離れていた音楽の楽しさを取り戻し、ブランクはあるものの楽しくバンド活動もさせてもらっている。〖幸福〗

このように、私のちっぽけな人生だけでも様々な嬉しいことや悲しいことを生み出し、いつ不幸になりいつ幸福に転じるかは全く読めなかった。
まさに「人間万事塞翁が馬」である。

仕事においてもそうだ。
しんどくて辛い時期もあるが、それが不幸な事かどうかは先になってみないと分からない。
気楽に楽しく仕事出来ていても、それが幸福な事かどうかは先になってみないと分からない。

頑張るしかない。
人生なんて「人間万事塞翁が馬」なのだから。

大阪事業所 調査診断部 福留 将太


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