悩ましき業界用語たち
※本コラムは、2021/11/10に株式会社ジャストのコーポレートサイトへ投稿されたコラムの再掲となります。
縁あって20年近く建築に関わる仕事をしている。
特に建築に関する勉強をしたわけでもなく業界に飛び込んだ私は、話の中に出てくる言葉に困惑することになった。
建築では色んなところに業界でしか通じない名前があり、ちょっと大袈裟に言えば言葉の壁にぶつかった。
鉄骨溶接部、鉄筋継手部の検査員から始め、現在は大きな構造物の調査診断から、小さなカケラの成分分析まで、幅広い相談を受ける営業窓口をやらせてもらっている。
そんな中で出会った、印象に残っているものをいくつかを紹介しようと思う。
『ラーメン』
多くの人はどんぶりに入ったアレを思い浮かべると思われる。
業界では柱と梁を一体化させ、柱と梁で建物を保たせる構造のことである。
ドイツ語で『枠』を意味する言葉(Rahmen)で、確かに出来上がりは枠の組み合わせになる。
初めて聞いた時は柱梁接合部全体を指して「そこのラーメンになってるところ」と言われたため意味が分からなかった言葉である。
『まんじゅう』
多くの人は甘い餡の入ったアレを思い浮かべると思われる。
業界では鉄骨柱を立てる時に、高さレベルを調整するためのモルタルの塊である。
円形に施工されることが多く、単純に形が似ているというのが名前の由来らしい。
初めて聞いた時のことはよく覚えていない。
『いも・あんこ』
これはジャガイモ派とサツマイモ派、こしあん派とつぶあん派に分かれそうだ。
鉄筋業界では隣り合う鉄筋の継手が同じ位置にあることを「いも」ずらして配置されていることを「あんこ」という。
一般的にはあんこが正しい状態である。
名前の由来は昔も今もさっぱり分からない。
初めて聞いたのは某新築現場にて「そこイモになってるぞ!」と職人さんに教えてもらったときである。分かるわけがない。
『ねこ』
多くの人は四足歩行の某愛玩動物を思い浮かべると思われる。
業界では手押しでものを運ぶ一輪車のことである。
『ねこ車』とも呼ばれるらしい。
名前の由来は昔も今もさっぱり分からない。
初めて聞いた時のことはよく覚えていない。
『サイコロ』
多くの人は立方体の各面に1~6個の点が打たれたものを思い浮かべると思われる。
鉄骨業界では角形鋼管を使った柱の製作過程で、序盤の組立で出来る部品のことである。
名前の由来は恐らく形が似ているから。 初めて聞いた時は「あっちにサイコロあるから見て!」と頼まれたときだったと思う。
わけもわからずとりあえず“あっち”に行くとなるほど、サイコロっぽいのが重なっていた。
因みに全く同じものを『タイコ』と呼ぶ人もいる。
他にも印象深いものはまだまだあるが、ここでは他の意味があるものでまとめてみた。
業界では一般的に使われているが、他ではほとんど使われることが無い言葉が数多く存在し、こちらの方が圧倒的に多い。
さらに新しい材料や工法も次々出てくる。その都度言葉も増える。
全くもって悩ましい限りである。
次はどんな言葉が私を悩ませてくれるのか、とても楽しみである。
おまけ
子供のころから頻繁に見ているけど名前を知らないもの。(※我が家調べ)
正解は左から、グレーチング、エキスパンドメタル、チェッカープレートまたは縞鋼板である。
おおむね『側溝のふた』で通じる。
営業第二部
土谷 史生