開発AIエージェント【第3回】設計編「業務分析×AI出力テスト(PoC)で品質が8割決まる──デザインパターンや最新技術をどう取り込む?」
はじめに
連載第2回では、AIエージェント開発に必要な専門家や、内製・外注の選択肢を中心にお話ししました。そこでチームが整えば、次はいよいよ「設計」です。
本記事では、設計段階で品質が8割決まるとも言われる理由を掘り下げながら、実際に業務分析やAI出力テスト(PoC)でどこまで見極めるべきか、そしてデザインパターンや新技術との付き合い方を解説していきます。
1. 業務分析がカギ──“現場を巻き込む”アジャイルアプローチ
1-1. 業務プロセスの洗い出しと、暗黙知の可視化
AIエージェントを導入する際、まずは対象業務プロセスをしっかり分析する必要があります。
どの部署のどんなフローにボトルネックがあるか?
ルーチン作業か、それとも暗黙知や複雑判断が多いか?
従来の人ベースの業務プロセス分析と違うのは、AI技術を知っていないと**「どこをAIに任せられるか」の判断がつかない点。逆に現場業務を理解していないと、人が判断すべき箇所までAIにやらせてしまい暴走リスクが出る。
要するに、AI技術×現場業務の両方が分かるチームがアジャイルで分析し、何度もデモやプロトタイプ**を現場に見せながら要件を固めるのが大切です。
1-2. 現場を巻き込む“短いサイクル”での設計
アジャイルの設計プロセスでは、短いスプリントごとに進捗を確認し、現場の人たちから**「ここは違う」「これは要改善」**などの意見をもらいます。
PoC(Proof of Concept)で小さく試す
出力テストを実施し、実際にAIが返す答えを現場が見て評価
「こんな風に補正して」などのフィードバックを次スプリントで反映
細かい修正を積み重ねるうちに設計がどんどん高精度になり、最終的に業務要件に合致したAIエージェントが出来上がる、というわけですね。
2. AI出力テスト(PoC)がもたらす学び
2-1. なぜPoC(Proof of Concept)が必要?
PoCとは**「AIが本当に業務要件を満たせるか?」**を小規模で検証するステップ。
実際のデータを与えて、どの程度の精度で回答を作れるか
ハルシネーション(誤回答)頻度はどれくらいか
モデルのスピードやレイテンシは許容範囲か
フレームワークやライブラリを導入したときの安定性はどうか
短いサイクルでこういった不確実性を潰していくほど、後工程の大幅な手戻りを防げるのが大きなメリットです。
2-2. 現場が精度を確認しながらプロンプトや設計を調整
生成AIの場合、出力精度は**「現場の求めるレベル」**に依存します。
例:顧客メール対応なら誤回答が許されない→より厳しい対策が必要
例:社内のラフなアイデア出しツールなら、多少の誤差は創造性として許容
実際にPoCでAIが返すテキストを現場に見てもらい、**「ここはもっとシビアに」「ここは創造性重視」**などのリクエストを受けてプロンプトや仕組みをカスタムする。こういう泥臭いサイクルを何度も回すのが鍵です。
3. デザインパターンと最新技術のキャッチアップ
3-1. 代表的デザインパターンの例
Chain of Experts:業務を段階ごとにAIエージェントがバトンタッチ
Role-based:複数エージェントが並列作業し、最終的に出力を統合
AutoGPT型:大まかなゴールだけ指定し、エージェントがタスク分割して自走
どれを採用するかは業務フローの複雑さや組織の運用体制によるため、PoCで手応えをチェックしながら進めるのが無難です。
3-2. 技術進化×ライブラリ選択
LangChain、MetaGPT、その他多数のフレームワークが日進月歩で更新中。
フレームワークを積極活用→バージョン管理やコミュニティ活発度をチェック
自社独自実装→ノウハウは溜まりやすいが開発コスト増
アジャイル設計を前提にして、途中でライブラリを切り替える柔軟性も視野に入れておきましょう。
4. 内製or外注の視点(設計段階)
4-1. 内製の場合
メリット: 自社業務に詳しいエンジニアがダイレクトに設計→要件合致がしやすい
デメリット: AI技術のキャッチアップに工数が割かれ、専門家不足だと誤設計リスクが高い
4-2. 外注の場合
メリット: AI特化ベンダーの知見を直接活用→PoCや短期リリースがスピーディ
デメリット: 自社業務知識の共有が手間。ノウハウが社内に蓄積しにくい
要するに、どこまで自社で抱えるか、どこから外部パートナーに委託するかをアジャイル設計の段階で決めておくと混乱が少なくなります。
5. まとめ:設計段階で品質が8割決まる
業務分析 & PoC
現場を巻き込むアジャイルアプローチで、早期に「できる/できない」を把握
AIの出力を実際に見ながら調整を重ねる
デザインパターン & 技術アップデート
Chain of Experts, Role-based, AutoGPTなど、自社業務に合った構成を検討
ライブラリは急速に変わるので、柔軟に乗り換えられる設計思想が重要
内製 or 外注(設計面)
内製:要件すり合わせはやりやすいが技術負荷が大
外注:専門ベンダーのスピード活用。ただしノウハウ蓄積は限定的
結局、AIエージェントの成功確率は、設計の質でほぼ決まります。業務分析とPoCの段階で無駄にせず、しっかりフィードバックを回すプロセスを仕立て上げると、後の実装と保守が格段にスムーズになるでしょう。
次回(第4回)は、いよいよ**「AIエージェント開発(実装)編」**。詳細設計が固まったあと、社内環境や既存システムとの連携をどう実現するか、アジャイル開発ならではのポイントを紹介します。どうぞお楽しみに!
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