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AIエージェント革命【第5回】ジュリオ社が実現したマルチエージェントシステム導入事例
監査業務こそ“暗黙知を丁寧に紐解くAI”が活躍する
「複雑に見える業務は、暗黙知が多いからこそAIエージェントが入り込む余地が大きい。そして、人間同士のワークショップでこそ“眠れるナレッジ”が引き出される──」
これまでの連載で、AIエージェントの基礎、導入メリット、リスクと制御のポイント、そして複数エージェントを連携させる“マルチエージェントシステム”の可能性を紹介してきました。今回は、その応用事例として監査業務を取り上げます。
監査といえば、「膨大な書類をベテランの経験でチェックする、AIとは縁遠い領域」というイメージがあるかもしれません。しかし、実は暗黙知を丁寧に“言語化→AI用の学習データ化” することで、複雑と思われていた業務にこそAIエージェントが大きく貢献できるのです。ジュリオ社が進める事例から、そのヒントを探っていきましょう。
1. なぜ監査業務は“AI導入が難しい”と思われていたのか
1-1. 大量の非定型データに暗黙知が絡む
監査法人の仕事は、財務諸表だけでなく、契約書や議事録、メール記録、社内ルールなど、多種多様な文書や情報を照合しながらリスクを洗い出すのが肝です。
情報源が多岐にわたる(紙、PDF、社内システム、外部資料)
法令・業界規定、企業特有のルールや文化が絡む
ベテラン監査人の“経験と勘”に大きく依存
こうした“暗黙知” が多い業務は、「AIなんか入り込めない」と思われがちでした。
1-2. 「人間の経験・勘ありき」という先入観
監査では、ベテランが持つ「ここが怪しい」「この資料は重要だ」といった直感的判断が非常に重要です。これをAIで再現するのは難しいという先入観が強く、実際に導入へ踏み切る企業は少なかったのが現状です。
2. ジュリオ社のアプローチ──暗黙知をワークショップで言語化→AI用の学習データ化
2-1. ベテラン監査人のナレッジをワークショップで引き出す
ジュリオ社がまず行ったのは、監査法人のベテランスタッフへの徹底ヒアリングとワークショップです。
「◯◯の契約形態は不備が多い」
「△△資料がないときは再確認必須」
「こういうメールがあった場合、□□リスクが潜んでいる可能性」
一見“感覚的”に思えるポイントを、できるだけ言語化していきました。
なぜワークショップが良いのか
暗黙知は、人が頭の中で漠然と把握している知識であり、文章にしづらいことが多いもの。これを引き出すには、人と人との信頼関係やコミュニケーションが欠かせません。ワークショップ形式で「この書類はなぜ疑うのか?」などを問いかけ合うと、眠っていたナレッジが自然と表面化します。これはまさに人間同士の対話だからこそできる“面白さ”でもあり、人間ならではの仕事ともいえます。
2-2. 言語化したナレッジをAI用の学習データとして整理
ワークショップで掘り起こしたルールや注意点は、AI用の学習データとしてまとめられます。
「A書類とB書類の整合性を優先チェックすべき」
「特定業種や取引先の場合、追加の問い合わせが必要」
「過去にはこういう不備パターンがあったので要注意」
こうして暗黙知をドキュメント化→AIエージェントで参照可能な形に落とし込むことで、ベテランの勘が“全スタッフで共有できるナレッジ”に変わり、ナレッジマネジメントが実現するわけです。
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3. 複数エージェントが監査業務を支援する仕組み
3-1. 文書解析エージェント&過去事例アシスタントエージェント
監査で最も大変なのは、膨大な文書をすべてチェックして“漏れ”を防ぐ部分。ここを文書解析エージェントが担い、
企業から受け取った各種書類を仕分け
必要書類や関連ファイルを素早く紐付けて担当者が見落としにくいようサポート
さらに過去事例アシスタントエージェントが、不備やリスクがあった以前の監査調書を検索し、「似たケースがありませんか?」 と提案。新人でも経験豊富なベテランの視点を“借り”やすくなりました。
3-2. 監査調書素案エージェント
暗黙知を活かしたルールを踏まえて、エージェントが監査調書の素案をまとめます。
各文書がどの調書に関連するかを整理
「この項目については再確認を推奨」といったコメントを付与
最終的な判断や承認は人間が行う設計にしてあるため、監査法人が求める法令順守や責任分界を保ちつつ、大幅な効率化を図れるのが特徴です。
4. 具体的な効果:効率と“漏れのない”有効性
4-1. 分析漏れが起きにくい
従来は、担当者ごとにチェックリストを独自で作り、記憶に頼る部分も多かったため、どうしても抜け漏れが発生しがちでした。
AIエージェントが文書の存在を一括管理し、全資料を網羅的に把握
「この資料が見つからないけど大丈夫か?」というアラートを自動送信
こうしたサポートにより、監査の有効性が増したという声が実際に上がっています。
4-2. ベテラン並みの品質を均一化
暗黙知をAI用の学習データに落とし込むことで、ベテランの視点を組み込んだチェックリストがエージェント上に常備される形になります。
新米でも「これは要再確認」「こういうパターンがあるはず」といった示唆を得られる
忙しい時期にスタッフが増えても、品質はベテラン並みに均一化
4-3. 監査の効率性と有効性を同時に実現
「効率化したら見落としが増えるのでは?」という監査特有の懸念も、エージェント導入でむしろ分析漏れが減る方向に作用し、さらに作業時間を大幅に縮減できています。
担当者は素案をチェックすればよいので、判断・承認に注力できる
難しい書類やレアケースもアシスタントエージェントが提案をくれる
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5. なぜ“複雑業務”こそAIエージェントが向いているのか?
5-1. 複雑の正体は“暗黙知が多い”から
監査のような業務は、多種多様なデータと多段階ステップが絡み合い、「複雑だからAIは無理」と思われがちでした。しかし、複雑さの根源は“暗黙知の塊” である場合が多いのです。
ワークショップ形式で丁寧に言語化
AI用の学習データとして落とし込む
これにより、人間の勘や経験をうまくAIエージェントに活かすことが可能になります。
5-2. ワークショップで“眠れるナレッジ”を人間が引き出す面白さ
暗黙知を引き出すのは、実は人間にしかできない仕事といえます。ベテラン監査人の頭の中に眠るノウハウを、AIの専門家が訊き出し、業務の専門家と協力してAI用の学習データにする過程は、人間同士の信頼関係やコミュニケーションが不可欠。だからこそ、“複雑を丁寧に紐解く” という取り組みこそが、人間ならではの面白い仕事でもあるのです。
まとめ──監査の事例が示す“暗黙知AI化”のインパクト
監査業務のように一見ハードルが高い分野でも、暗黙知を言語化→AI用の学習データ化することで、業務効率と有効性を同時に上げられる。
複雑業務の“複雑さ”の本質は暗黙知の塊。だからこそ、ワークショップで丁寧に紐解けば、AIエージェントの強みをフルに活かせる。
最終判断は人間が担うプロセス設計を守ることで、責任・コンプライアンスの懸念をクリアしつつ、ベテラン並みの品質を均一化。
今回の監査法人の事例は、金融・製薬・物流・法務など、膨大な文書と暗黙知が絡む業務にも広く応用できるヒントを含んでいます。「複雑=AI不可」 という思い込みを捨て、暗黙知をAIエージェントに活かす道を探ることが、今後のイノベーションのカギとなるでしょう。
次回予告
第6回では、“人間とAIエージェント”が共存する新しい働き方を、より具体的に解説します。ノープロンプト型で自律的に動くAIをどう監修するのか、現場が抵抗なく使いこなすための教育や運用設計など、監査のような複雑業務事例から得られる汎用的なコツを掘り下げていきます。どうぞお楽しみに!
個別相談会 & 採用情報のご案内
ジュリオ社 個別相談会(Zoom)
URL: https://meet-gpt.youcanbook.me/
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ジュリオ社 採用情報
URL: https://www.jurio.jp/
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「複雑業務だからAIは無理」ではなく、“暗黙知を言語化→AIエージェント化” というプロセスを踏めば、誰もがベテラン級の知識を活かせる時代が来ています。次回は、この知見をさらに広げ、“人間×AIエージェント”の新しい共存モデルを解き明かしていきます。ぜひお楽しみに!