開発AIエージェント【第2回】チーム編「専門部署レベルの意気込みが必要?──内製か外部リソースか、チームづくりのリアル」
はじめに
連載第1回では、「アジャイル体制でないと厳しい理由」と「反復プロトタイプ」の重要性を解説しました。しかし、アジャイルでやりたいと思っても、“誰がAI開発を担当するのか?”**という現場の問題がすぐに立ちはだかります。
AIエージェントの開発には、従来のソフトウェア開発とは異なる専門知識やチーム構成が必要です。そこで今回は、どんな専門家が必要なのか、内製化するならどれだけの覚悟が要るのか、外部リソースを使うならどう進めるのか、という“チームづくり”の論点をまとめていきましょう。
1. なぜ「専門部署レベル」の覚悟が必要なのか?
1-1. AIエージェントは1人で作るのは非現実的
「AIエージェントを導入したい」と言っても、その背後にはモデル開発・データ整備・システム連携・UI/UX設計など多種多様な工程があります。
PM(プロジェクトマネージャー) …全体進行管理、リスクマネジメント
アーキテクト/エンジニア …技術選定&実装
データエンジニア、プロンプトエンジニア …AI部分を担当
UI/UXデザイナー …画面設計でユーザー体験を向上
ざっと挙げてもこれだけあるため、**1人の“スーパーマン”**がすべてを兼ねるのは極めて難しい。それゆえ、専門部署レベルの規模を意識しないと、技術面や運用面で苦しくなりがちです。
1-2. 採用コストと採用難度
AI関連人材は市場価値が高く、給与相場も相当。さらに、AIエンジニアやデータサイエンティストなどは引く手あまたで競争が激しいのが現状です。
スタートアップやIT企業との争奪戦
給与相場の高騰
社内でAI技術を追い続けるだけの予算や風土が必要
内製でフルメンバーを抱え込むなら、相当な予算投下と覚悟がないと維持できない可能性も考慮すべきでしょう。
2. AIエージェント開発で求められる専門家
それでは、具体的にどのような役割が必要でしょうか。前回(第1回)で少し触れましたが、AIエージェント開発で想定される専門家一覧を改めてまとめます。
プロジェクトマネージャー(PM)
全体の計画、進行管理、リスクマネジメント
ドメインエキスパート(専門家)
業界特有の知識を提供(金融、医療、製造など)
ビジネスアナリスト(BA)
業務プロセスを分析し、AIの適用シーンやROIを検討
AIアーキテクト(AT)
システム全体のアーキテクチャ設計と技術選定
最新技術を追いながら最適なソリューションを統合
データエンジニア(DE)
データの収集・分析・前処理
統計学や言語解析などのスキルが求められる
AIプロンプトエンジニア(PE)
生成AIのプロンプト設計や学習データ整備を担当
大規模言語モデルとのやり取りを最適化
ソフトウェアエンジニア(SE)
フロントエンド・バックエンド開発や品質保証
インフラエンジニア(IE)
クラウドやオンプレの環境構築・運用
スケーラブルで安全な基盤を整備
セキュリティエンジニア
AIモデルやシステムをサイバー攻撃やデータ漏洩から保護
UI/UXデザイナー(UX)
使いやすいデザインでユーザー体験を向上
AI保守エンジニア
日々のシステム監視と問題解決
AIリサーチャー
生成AIのアルゴリズム改良や新しい手法の研究開発
…ざっと見ても、かなり幅広い人材が必要になるのがわかります。
3. 外部リソースの活用も検討しよう
3-1. 部分外注で「足りない役割」を補う
たとえばPMやBAは内製しつつ、**“AIプロンプトエンジニア”や“アーキテクト”**など希少人材だけ外注する、といったハイブリッドが考えられます。
これにより、チーム全体のコストをやや抑えながらも、先端技術を使いこなせる専門家の知見を得られます。
3-2. 全面外注する選択肢
プロジェクトを丸ごと外注すれば、開発ベンダーが必要な人材をワンストップで揃えてくれる。ただしノウハウが社内に蓄積されづらいリスクが高く、仕様変更のたびにコミュニケーションコストが発生します。
とはいえ、AI開発の先端ノウハウ(モデルのチューニング手法や最新フレームワークのベストプラクティスなど)は、専門ベンダーならすでに確立している場合も多く、短期リリースを実現できるメリットがあるのも事実です。
4. アジャイルで進めるには「チーム連携」が命
4-1. 人材が揃っても連携が悪ければ失敗
せっかく豪華メンバーを集めても、連携が取れていなければアジャイル開発は機能しません。短いスプリントごとに、各人が進捗や課題を共有し、必要に応じてタスク再配分するのがアジャイルの基本。
スタンドアップミーティング(毎朝15分程度で「昨日やったこと/今日やること/詰まっていること」を共有)
週1デモやレビューで、動くソフトを即座に現場に見せる→フィードバックを吸収
4-2. AIエージェント独自の協力体制
データエンジニアやAIプロンプトエンジニアがモデル精度を上げる一方、ソフトウェアエンジニアやインフラエンジニアが本番環境を整える。そして、BAやドメインエキスパートが業務要件をブラッシュアップしながら、ユーザー側の調整を行う――こうした有機的な連携が必要です。
5. まとめ:チームこそ「AIエージェント開発」の成功の要
内製化するなら専門部署レベルの覚悟
多種多様な専門家が必要
高コスト&競争激化で採用のハードルも高い
外部リソース活用も選択肢
レアな専門家を部分的に外注する or 全体を丸ごと委託
ノウハウが社内に残りにくいリスク
アジャイル体制×チーム連携
人材が揃うだけでは不十分。短スプリントで“動くプロトタイプ”を見せながら現場の声を取り入れ続ける
毎日のスタンドアップやレビュー会で課題を即共有
次回(第3回)は**「AIエージェント設計編」**として、**業務分析やAI出力テスト(PoC)**など具体的な設計ステップに踏み込んでいきます。チームがアジャイルで連携するからこそ、業務プロセス×AI技術の融合がスムーズに進むので、ぜひ続けてご覧ください。
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あなたのチームに不足している専門家はどれくらい? そして内製か外部リソース活用か――その選択が、AIエージェント開発の成否を大きく左右するかもしれません。次回は「設計編」で、いよいよ業務分析やPoCなど具体的なアプローチに踏み込みますので、どうぞお楽しみに!