【怪談】おばあさん(仮)
Sさん30代男性から聞いたお話。
Sさんが小学生高学年から中学生までの間、毎日のように遊んでいた幼なじみの男友達Jくんがいた。
二人はよくJくんの家で遊んでいた為、Jくんご両親や祖母とも仲が良かった。
Jくんご両親は共働きだったため、祖母が留守を預かっておりたびたびお菓子やジュースなんかを差し入れてくれたそうだ。
Jくん祖母はJくんの家のそばに住んでいたため、祖母の家でも何度か遊んだことがあった。
Jくん祖母は当時70代くらいで一人住まいのようだったが、いつもニコニコしていて気さくに話しかけてくれて、上品そうなおばあさんだった。
SさんとJくんは高校が別になり、Jくんは遠方の大学に通うことになり次第に二人は疎遠になった。
それから数年が経ち20代半ばの頃、同窓会がありSさんとJくんは再会を喜んだ。
積もる話から次第に昔話へ移っていったのだが、Sさんは「そういえば、おばあちゃん元気?昔めっちゃ世話になったからなぁ」とJくんに話すと、Jくんはそれこそ鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして「え、だれ??」と返してきた。
Sさんは「いやいや、Jのおばあちゃんだよ!いつも俺らの子守してくれたじゃん!」と驚いて話したが、Jくんは
「はぁ?誰かと間違ってない?うちばあちゃんはどっちも死んでるよ。俺が生まれる前に。」
Sさんは少し考えたが、勝手に納得した。
あのおばあさんはJくんの祖母ではなく、ただの知人か何かで、Jくんご両親に頼まれて俺らの世話をしてくれためっちゃ心優しいおばあさんだったんだと。
それを踏まえてもう一度訊ねた。
「あ、そかそか。あのー、あの人。俺らの子守をしてくれてたおばあさんは元気?」
するとJくんは
「いやいやいや怖いんだけど!誰のこといってんの?俺カギっ子だったから家に誰もいねーよ!」
と一番最悪なパターンの答えを返してきた。
Sさんは混乱してしまったが、今ここで詰めても答えが出ない気がしたので、そうかとその話を終わらせ引き続き同窓会を楽しんだ。
Sさんは地元に就職していたため、後日Jくんの祖母だと思っていた人の家を見てみようと思った。
Jくん祖母(仮)の家はもう十数年見ていなかったが、道順は覚えている。間違える訳がない。
たどり着いた先は墓場だった。
大きな家が一軒ほどの広さの墓場で、そこに並ぶ墓石はみな古いものが多かった。
Sさんは呆然とし、恐怖した。
記憶違い?いやいやそんなはずはない。
スーパーの向かいにある老舗のチェーンケーキ屋さんの脇を入ってすぐ右。
平屋が並ぶ小道を入っていってすぐに左。間違いない。
Jくん祖母(仮)のとなりの二階建ての住宅には、2度ほど遊んだ事がある後輩が住んでる。
今たどり着いた墓場のとなりのその同級生の家がある。
場所は間違いない。
……
Sさんは記憶違いかと思い、否、記憶違いであって欲しいと思い近辺をグルッと回って確認してみた。
が、Jくん祖母(仮)の家は見あたらなかった。
何度記憶を辿っても場所は間違っていない。
でも記憶にあるのは、墓場ではなくそこそこ新しい白い家が建っていたハズだ。
Sさんは少し考えたあと、とてつもない恐怖に襲われすぐにその場を離れた。近くに駐めていた自家用車に乗り込むとすぐに自宅に向けて走らせた。
たばこを吸いながらいろいろ考えた。
昔の記憶はいったい何だ?まさか幽霊だったのか?
いやJくんもそのおばあさんと会話していたしお菓子なんかも手渡しで貰ってた。俺だけに見えてる幽霊なんて事はない。
誰かと間違えてる?いやそんなハズはない。あれは確かにJくんだった。Jくんの家でも会ってるし、おばあさんの家にも二人で行った。勝手知ったる感じでJくんが引き出しからお菓子を出してたの記憶にある。間違いない。
ではJくんがシラを切ってるのか?だったらおばあさんの家が墓場になってるのは説明できない。
あの墓場の感じだとあきらかに昔からあった感じだ。
おばあさんの家を取り壊して新たに墓場にした感じではない。
結局あれは何だったんだ?
……
後日、Jくんに電話してみたが既に使われていない電話番号だったし、Jくんの実家の前を通ってみたら現在は別の家族が住んでいるようだった。
Jくんへこちらから連絡する手段がないのだ。
Sさんはこの話を私にしてくれた時に、「まぁ子どもの頃の話だしね。記憶違いって事にしてるよ」と話していた。
「子どもっても中学生の頃の思い出だからなぁ。正直納得はしてないけど、どうしようもないしね。」とも笑っていた。
一体何だったんでしょうね。
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