【怪談】驚いた表情
Yさん40代男性から聞いたお話。
20年ほど前、Yさんは交通事故の現場に遭遇したことがある。
田舎の住宅街で、乗用車と自転車の接触事故だったようだ。
路肩に、凹んだ乗用車とグシャグシャに拉げた自転車があり、警察と事故関係者らしき女性が数人で話していた。
警察のバスやらカラーコーン、飛び散った破片や何かで濡れたアスファルト。
現場は物々しい雰囲気で、素人ながら「自転車に乗ってた人は無事では無いだろうな」と感じたそうだ。
Yさんは事故現場を通り過ぎたものの、珍しい光景に魔が差し、携帯のカメラで写真を隠し撮りのように撮ったそうだ。
歩きながら撮った写真を眺めてみたが、少し冷静になるとなんて事はない、まさにただの事故現場だった。
後日友人と飲んだ際に雑談としてその話が挙がった。
そうそうこの前派手な事故現場に遭遇してよ〜、と携帯を取り出し写真を友人に見せた。
友人も、うわマジ!?等と乗り気で携帯を覗き込んだが、その直後に友人が青ざめた。
「お前これ心霊写真じゃん!」
Yさんは気付かなかったが、事故現場で心霊写真を撮れていたなんてなんたる偶然。面白い物が撮れたかもしれないと嬉々として友人に尋ねた。
マジ!?どこどこ!?
すると友人は
「お前これ笑えねーぞ。気付かなかったんだろ?たぶんこれマジでやばい奴だぞ」
と言って写真を指差した。
指差した先には喪服の女性が写っていた。
Yさんは事故現場を通り過ぎ、軽く後ろを振り向いて写真を撮ったため、写真奥に事故現場、手前には事故現場に続く道路が写っていた。
が、今見ると事故現場手前の道路に喪服の女性が佇んでいる。
まるでYさんが写真を撮っている事に気付き、画面外から覗き込むように。
しかもその女性は驚いた表情でカメラを見つめており、何よりもその顔には炎のような模様が浮かびあがっていた。
Yさんは驚きのあまり言葉を失った。
そんなYさんを尻目に友人は続ける。
「お前のリアクション的に、絶対その場にこの女の人いなかったろ?
しかも喪服とかおかしくね?いたら気づくだろ普通、こんな服だと。
んでこの表情と顔の模様。
やばい奴にお前見つかったんじゃねーの?」
Yさんは友人の見解を聞くと、不謹慎な事を平気でしてしまった自分への警告のようなバチのようなモノに感じたそうだ。
友人のススメでその写真はその場で消した。
Yさんはそれから事故や大きな病気、身内の不幸などには見舞われなかったという。
が、ときどき、数年に一度くらいに写るのだそうだ。
あの喪服の女らしき人影が。
今のところ不幸に見舞われてはいないが、ひとつ気になる事があるという。
ときどき写り込んでしまう喪服の女の顔は真顔だという。
Yさんは
「あの時は偶然見つけて驚いたんでしょうね。
でもね、もう驚いてない、ただじっとこちらを見てるのが怖いんですよ。
何かする機会を伺ってるような気がして」
と話してくれた。
当時この話を聞かせていただいた時に私は、この喪服の女が撮れてる写真は今の携帯にないのかと尋ねたところ、全部消してるとの事だった。
そうですよね、不気味ですもんね、手元にあるのは怖いですよねー
消してしまうなんて勿体無い!と思うほうがオカシイですよねー…