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【怪談】ゴリゴリのラブコメ

Sさん50代女性から聞いたお話。


Sさんの家では本がよく無くなったそうだ。


物心ついた頃から、読んでいた絵本が無くなる事が多かった。
ある日、寝る前に母親に絵本を読んでもらおうとしたところ、その本をしまった場所に無かった。
泣きながら母親に伝えると、母親は微笑みながら返した。
「それはね、いたずらオバケさんの仕業だよ。
 本とかモノが無くなる事はよくあるけど、何日かするとフイッっと出てくるから。
 お母さんもおばあちゃんもよく隠されてたんだよ。
 オバケさんも本が読みたいみたいだから、少しの間貸してあげてね。」


幼少のSさんは、へぇ~世の中は不思議なもので溢れてるで!くらいに思ったそうだが、その現象はそれからも度々その現象は起こったそうだ。

Sさんが読んでいる漫画や小説、参考書がたびたび無くなる事はあったそうだが、数日するとまた元に戻っていたし、友人や図書館から借りた本は無くなる事は無かったので、Sさんの母親同様、大して気にすることは無かった。


しかし、ある日突然恐怖を覚えたそうだ。


それはSさんが結婚し娘が生まれ、3~4歳になった頃だ。
娘から「本が無くなった」と言われた。


Sさんは母親に言われたのと同じように「いたずらオバケの仕業だよ、心配しなくて良いよ」と伝えた。
が、何か激しい違和感のようなものを感じたそうだ。


そして決定的だったのが、Sさんのモノが無くなるという現象が起きなくなった事だ。


娘の本やおもちゃ(主に本だったらしい)が無くなるという事は度々あったが、Sさんが所有している本やモノが無くなるという事がピタリと止んだ。


Sさんの娘は高校生になったが相変わらず「またオバケかな~、あの本が無いんだけど~」と愚痴っていたが、Sさん自身のものは一切消える事が無い。

家のモノがちょくちょく無くなるならわかる、そうではないのだ。

Sさんの娘個人の所有物のみが無くなるのだ。

つまり、そのオバケはSさんの娘のみをターゲットにしているという事だ。


Sさんはそれに気付いた時に猛烈な恐怖を感じた。

娘がターゲットにされている。
オバケの本当の狙いは一体何なんだろうか。
人のモノを間借りするだけが目的ではないはず。

そもそも「オバケ」って一体なんだ?


考えれば考えるほどSさんは恐怖と不安に苛まれた。

正体不明の「オバケ」の本当の狙いは…娘の命ではないのだろうか…


Sさんは居ても立ってもおれずSさんの母に電話で問い質した。
Sさん母の場合も同じで、Sさんが幼少の頃にモノが無くなって以来、Sさん母のモノが無くなる事が無くなったそうだ。

Sさん母も同様の不安を感じて、何度かお寺や神社に相談した事もあったそうだ。
お祓いを何度か受けた事もあるそうだが、相変わらずSさんのモノが無くなり続けた。

困ったSさん母は霊能力者チックな人達にも視てもらった事まであるそうだが、彼らは一様に「払うようなものは憑いていない」と口にした。
家の中も視てもらい状況を説明しても同じだった。

そうして打つ手が無くなったSさん母はどうしようもないまま月日が流れたという。


話を聞いたSさんは更に不安と恐怖が募っていったが、娘を守りたい気持ちからある決意をした。

もう私がどうにかするしかない。私が守るしかない。

そう決心したSさんは、すぐに行動に移った。
「オバケ」が本当に狙っているものは何か。それを把握して対策を立てるしかない。

しかし娘を必要以上に怖がらせてはいけない。


Sさんは娘に、さりげなく「最近何か無くなってる?」と聞いてみた。


すると現役女子高生娘はニヤッしながら答えた。


「ちょっとお母さん聞いてよwwww最近オバケが借りていく本さwwww少女マンガばっかなんだよwwwwwゴリゴリのラブコメwww」

「しかもさ、前お母さんとその実写映画観たじゃん。あれ原作漫画なんだけどさ、観たその日から借りていってたよwwww」

「しかも今回は読むペースめっちゃ早いwww数冊ずつ一気に借りられたwwwwwww」

「あ、お母さん、今度あの映画観ようよ!前にオバケ借りてったヤツの実写映画だよ!」

「オバケさぁ、少女マンガ好きみたいなの知ってた?最近少女マンガばっか借りてくよwwwラブコメ系多いwwww」

その話を聞いてSさんは


あ、大丈夫だこれ。


と思ったそうだ。
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その話を聞かせていただいた時に私は感想を話した。

もしかしたらそのオバケ、守ってくれてるものだったりするんですかね?

するとSさんは、
「やっぱり?前に母さん(Sさん母)が言われた、払うものが憑いてないってのは、悪いものじゃないって事かもしれないよね。
 だから今はあんまり考えないようにしてる。それに、娘はもう家を出てるけどそれなりに幸せにやってるみたいだし。」


結局正体はわからず仕舞いだったが、話を聞いた感じは悪いものでは無さそう、というかそうであって欲しいと思ったオハナシだった。


--------蛇足---------この線より↓は読まずとも良いのだ------------

ちなみにSさんに聞いたところ、オバケが借りていったマンガのタイトルはなかなか興味深くわかりみが深かった。なにせ娘が持ってるマンガのラインナップなのでSさんが全て把握できなかったらしいが。

本編で挙がっていた実写映画化した少女マンガとは、鈴木亮平さん主演のあの物語!だったのは間違いなく記憶している。

もうひとつの実写映画化のタイトルは私はわからなかった。

他に借りていった本のタイトルは何作品かはアニメ化していた気がするが、間違いなく覚えているのは「人×人外」のヤツでアニメ化もはじめましたっていう感じの作品だった。


オバケが「人×人外」のラブコメを読むというのがまた。ね。

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